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令和7年度 淡路市長施政方針

印刷用ページを表示する掲載日:2025年2月28日更新
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(はじめに)

 今から20年前、平成17年6月、淡路夢舞台国際会議場で開かれた淡路市議会定例会において、合併前から在任の67人の市議会議員の皆様に、施政方針を申し上げました。あのとき、「それぞれの特性をもった五つの地域を、一つの行政体として運営するには、三つの必要事項がある。」と、申し上げました。

 一つ目は、信頼関係の構築で、まずは情報共有と相互連携。

 二つ目は、市民が生活圏と行政圏を区別して考えること。

 そして、三つ目は、夢です。

 かつて、夢の懸け橋と呼ばれた明石海峡大橋。昭和32年3月の神戸市議会において、その建設の是非を問われた原口忠次郎・神戸市長が答弁した「人生すべからく夢なくしては叶いません。」という言葉。当時、夢の懸け橋とは、「およそ実現不可能な夢まぼろしの橋」という、揶揄の意味がこもった呼び名でした。

 その言葉から40年余りの時が過ぎて夢が叶い、明石海峡大橋の開通によって、島でなくなった淡路島において、津名郡5町合併によって誕生した淡路市は、地理的な宿命により、大阪湾ベイエリアの一翼を担うことになりました。「大阪・関西万博」の開幕が間近に迫った今、はたちになって大人になった淡路市には、これまでの歩みを止めず、少年の頃に抱いた夢を実現させるときが訪れています。

 

(これまでの歩み)

 これまで、市制発足時から段階的に目標を定め、戦略・戦術をもって政策に取り組んでまいりました。

 市制発足時に定めた基本方針は、

 一つは、集約のメリットを生かし、質の向上を目指す。

 二つは、5地域の融和を図り、一体感の醸成を目指す。

 三つは、継続的財政運営と市政全般の適正化を目指す。

 これらを基本姿勢とし、公平、公明、公正な行政サービスを実行してまいりました。

 成熟した市政への準備として、これまで1期4年を一つの区切りとし、その時折の目指すべき将来像を示しながら、その実現に向けて取り組んできました。この走り続けた20年を振り返ってみますと、

 

 まず1期目(平成17年度~平成20年度)は、「ふるさと五弁の花の集約」をマニフェストに掲げ、5地域の融和を図り、市民の一体感を醸成する中で、地域格差の解消を図り、バランスに配慮した整備に努めました。施設整備では、国の財源を有効に活用し、防災拠点と給食センターの機能を一体化させ、防災あんしんセンターとして整備しました。

 スローガンは「明石海峡大橋無料化」とし、島民会議を立ち上げ、代替道路のない国道、生活道路は無料であるとの信念から、全島的な無料化運動を積極的に推進しました。その結果として、片道2,600円だった通行料金は、900円を経て、現在は910円。交流人口の増加、観光の活性化へとつながりました。

 また、これまでに培った行政経験を最大限に生かし、危機的な財政状況からの脱却、赤字決算の回避、身の丈に合った財政基盤の構築に努めました。

 

 2期目(平成21年度~平成24年度)は、財政基盤を強固なものにするため、更なる歳入の確保と歳出の整理を断行し、その上で、企業誘致の積極的な展開と、特色ある教育の推進に努めました。また、豊かな自然と観光資源を生かし、「世界的観光立島・淡路市」をスローガンとして、地域の魅力向上を図りました。

 企業誘致では、都市部に近く、豊かな自然環境を有する地域の優位性に加え、市独自の支援制度の創設、トップセールス活動などにより、市内外から多くの企業進出や拡充につなげ、新たな雇用の場を創設してきました。その成果として、令和2年度から社会的要因による人口は増加に転じており、また、税の増収にもつながっています。

 観光施設では、未利用施設となっていた旧野島小学校が、のじまスコーラとして、後の西海岸(西浦)の活性化につながる拠点施設となり、観光振興の原点を築くことができました。

 また、情報化社会を生き抜くための教育として、小中学校の情報教育を推進しました。教員の資質向上に併せ、タブレット端末の普及など、教育環境の整備について、ソフトとハードの両面から取り組みました。このことは、「公立学校情報化ランキング2019」において、小学校は第2位、中学校は第5位という全国的な評価へとつながっています。

 さらに、厳しい財政状況であっても地域の基盤整備は必要不可欠であることから、一宮中学校体育館と市民体育館の機能を併せ持つ、一宮体育センターを整備しました。

 

 3期目(平成25年度~平成28年度)は、「いつかきっと帰りたくなる街づくり」をマニフェストとし、市民住民が安全安心で快適に生活でき、住み続けたくなる街づくり、淡路を離れて島外で頑張っている人たちが、いつかきっと帰りたくなる街づくり、淡路市を訪れた人たちが、住んでみたくなる街づくりを進めました。また、「淡路島を世界遺産に」をスローガンとして掲げ、弥生時代の鉄器遺跡から、古事記に描かれた国生み神話や、食で都の暮らしを彩った御食(みけつ)国(くに)など、「国生みの島・淡路」を構成する風土資産をストーリー化することにより、日本遺産の認定へとつなげました。

 企業誘致では、東洋合成工業株式会社淡路工場、プライミクス株式会社本社工場などが操業しました。

 また、地理的課題の解決に向けた取組では、有事の際の海路の確保と、明石海峡大橋を通行できない小型バイクや自転車での移動が可能になるよう、高速船「まりん・あわじ」を造船しました。陸上交通では、不採算性を理由に路線撤退した民間事業者に代わり、北部生活観光バス「あわ神・あわ姫バス」の運行を開始し、市民生活に欠かせない公共交通手段を確保するとともに、観光客の利便性の向上につながる環境を整備しました。

 

 4期目(平成29年度~令和2年度)は、官民一体となり、「チーム淡路市」として、更なる環境整備を推進してきました。

 地域基盤の整備では、市民サービスの利便性向上のため、「津名ふれあいセンター」と「北淡事務所」を整備したことで、5地区のバランスに配意した現地解決型の事務所体制を完成させました。

 安全安心の生活環境づくりでは、高校生の通学のほか、高齢者等がいつまでも住み慣れた地域で生活できる基盤として、最も重要である公共交通手段を確保するため、「あわ神・あわ姫バス」の市内全域への路線拡大を行いました。

 また、津名図書館の整備により、市内図書館の2館体制を改めて整えるとともに、日本で初めての民間施設直結型スマートインターチェンジの開設など、観光振興につながる整備を行いました。

 

 そして、5期目(令和3年度~令和6年度)の政策目標としては、

 一つ目は、行財政改革と新たな行政展開、

 二つ目は、コロナ対策から南海トラフへの備え、万全な危機管理体制の構築、

 三つ目は、生活基盤の充実と新たな働き方改革、

 四つ目は、福祉と教育の先進地を目指す取組、

 五つ目は、田園観光都市へ美しい環境ブランドの構築、

 以上の5つを掲げ、「未来につなぐ輝く淡路市」の実現に向けて取り組んできました。

 一つ目の、行財政改革と新たな行政展開では、行財政改革の推進に加え、コロナ禍を契機とした、人や企業の東京一極集中型から地方分散型への流れを捉え、地域の魅力発信、移住や企業誘致の加速など、新たな行政展開を行ってきました。具体的には、旧尾崎小学校はコワーキングスペースのある複合施設「SAKIA」に、旧佐野小学校は地域を主体とする企業によって「さの小テラス」に、旧富島小学校は人材育成の拠点施設として「としまスコーラ」に、旧江井小学校はアパレル工房やギャラリー等の複合施設「ei-to」に生まれ変わり、それぞれ地域の魅力を発信する施設となりました。また、ふるさと納税については、累計100億円を突破し、特色ある教育や、観光振興のほか、町内会活動への支援といった地域づくり事業の財源として有効に活用しています。

 二つ目の、万全な危機管理体制の構築では、新型コロナウイルス感染症対策として、国の臨時交付金等を活用し、総額で約29億円の独自対策を行ってきました。また、「南海トラフ巨大地震」に備え、ふるさと納税を活用し、災害への備えの啓発として、無料防災用品カタログの全世帯配布や、身近な避難所として、町内会の集会所の改修など、ソフトとハードの両面から、地域防災力の強化、充実を図りました。

 三つ目の、生活基盤の充実では、公共交通の更なる充実を目指し、「あわ神・あわ姫バス」の路線を、県立淡路医療センターのある洲本市まで延長したほか、有事の備えとして、「まりん・あわじ」により明石海峡航路を維持し、併せて、岩屋ポートターミナルの整備も行いました。また、淡路市斎苑「緑風の里」を新たに建設し、その周辺では、地域が主体的に管理運営する市民農園やキャンプ場といった交流施設が完成して、新たな賑わいが生まれています。農業の分野においては、北淡路地域では、農業団地の再整備によって新たな企業が参入し、また、西山・柳沢東地区、入野地区では、ほ場整備が進んでいます。淡路島西海岸で発生した浮遊油による漁業被害に対しては、養殖のりの廃棄処分に対して支援することを速やかに決定しました。今や、淡路市の農業・漁業は、確実にブランド化が進んでいます。

 四つ目の、福祉と教育の先進市を目指す取組では、「いきいき100歳体操」の活動を広げるほか、様々なデータの活用によって健康寿命を延ばす取組を進めました。また、地域福祉コーディネーターが常駐する「福祉会館」を整備し、ボランティアの養成など、地域福祉の拠点施設となりました。子育て支援の分野では、物価高騰の影響を受ける家計を支援するため、国の臨時交付金を活用して、学校給食の無償化を実施しました。小中学校でのタブレット端末を活用した学校教育は、これまで先進的に行ってきたノウハウの積み重ねによって、更に進化しています。

 五つ目の、田園観光都市への美しい環境島ブランドの構築では、国の交付金を最大限に活用し、「大阪・関西万博」を見据えた観光プロモーションやアバター観光案内事業、淡路市デジタルマップ「あデジ」のほか、夢舞台サスティナブル・パークでの脱炭素先行地域づくり事業など、田園観光都市としての基盤整備を着実に進めました。

 

 このように、20年前には、まさに財政破綻の寸前であった淡路市は、市民が一体となった「チーム淡路市」の取組により、この20年で飛躍的な発展を遂げ、全国的に大きな注目を集めるようになりました。継続から創造、「淡路市の躍進を止めない」が、これからのキーワードです。

 

(経済情勢、財政状況)

 次に、経済情勢、国の財政状況を見ますと、国の令和7年度予算編成の基本方針では、「我が国経済は、600兆円超の名目GDP、33年ぶりの高い水準となった賃上げを実現した。成長と分配の好循環は、動き始めている。現在は、長きにわたったコストカット型経済から脱却し、デフレに後戻りせず、「賃上げと投資がけん引する成長型経済」に移行できるかどうかの分岐点にある。」とし、「こうした前向きな動きを、国民一人一人が実際の賃金・所得の増加という形で、手取りが増え、豊かさが実感できるよう、更に政策を前進させなければならない。賃金・所得が力強く増加していく状況が定着するまでの間、家計を温め、生活者が豊かさを実感できるよう、幅広い方策を検討することも必要である。」としています。

 そのような中、「最重要課題は、全ての世代の現在・将来の賃金・所得の増加であり、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、新たなステージとなる「賃上げと投資がけん引する成長型経済」への移行を確実にすることである。」としています。

 

(本市の財政状況)

 次に、本市の財政状況ですが、令和5年度の決算において、市制発足以来19年連続の黒字決算を堅持しました。基金残高では、一般会計で過去最高額となる179億円を確保しています。

 財政健全化指標においても、実質公債費比率は13.6%、将来負担比率は55.6%となり、一時の危機的な状況から脱し、確実に改善を進めています。

 平成7年に発生した阪神・淡路大震災から30年が過ぎても、なお本市には震災復興関連として約35億円の市債残高があり、その償還は令和20年度まで続きます。しかし、いまだにその影響はあるとしても、市制発足から20年が経過した今、島内の2市と比べても、そん色のない財政基盤が構築できたと考えています。

 その一方、本市では、合併市に対する国の特例制度を最大限に活用し、約285億円の合併特例債を発行して、新市の地域活性化につながる様々な施策を行ってきましたが、その発行期限は、令和7年度までとなっています。言い換えれば、未来の淡路市、これからの10年、20年先に向けて、約300億円の財源を新たに確保する必要があるということで、このことを、私は、「第二の財政危機」と位置付けています。

 国の特例制度がなくなる令和8年度以降に向けて、「第二の財政危機」を回避し、今後とも持続可能な市政運営を進めていくためには、危機的な財政状況を乗り越えてきた、これまでの様々な経験を踏まえ、新たな財政基盤の構築が求められています。

 

(市政報告会における要望事項)

 市民住民の方々への更なる行政情報の発信と共有を図るとともに、市制20周年を控え、改めて地域の課題を把握するため、大勢の方の御協力をいただき、市政報告会を開いてきました。市民住民の声に寄り添い、厳しい財政状況の中でもひと工夫を凝らして、新たな事業を行ってまいります。

 保育所などでは午後7時まで延長保育を実施していますが、学童保育の実施時間は午後6時までとなっており、このことは「小1の壁」の一つとして、子育て中の保護者の方々から、延長保育を求める声が多くありました。そのため、支援員サポーターの導入など、事業内容を工夫することにより、学童保育の時間を午後7時まで延長します。

 子育て世帯への支援としては、市内の高校に通学する生徒には、「あわ神・あわ姫バス」の定期券を全額助成していますが、市政報告会でいただいた御意見等を踏まえ、令和7年度からは、市外の高校に通学する生徒にも、「あわ神・あわ姫バス」の定期券を全額助成します。また、島外の高校・大学等に通学する学生・生徒の通学費助成では、運賃改定の状況を考慮し、上限額を拡充します。

 市政報告会では、町内会活動に対する支援についても多くの声がありました。防犯灯の電気料金については、これまで町内会の負担となっていましたが、町内会の加入率低下などを考慮し、市制20年を契機として、市の負担として統一することにします。

 そのほか、国の臨時交付金を活用した小中学校の給食費の無償化や、子どもの医療費無償化の所得制限の撤廃。市道の環境美化事業では、草刈りなどの維持管理費の予算を増額するなど、市民住民からの要望事項に対して、これまで同様に丁寧な対応を図り、現場行政として、更なる市民サービスの向上を図ってまいります。

 

(重点項目)

 淡路市は、これまでも、「特色ある教育の充実」、「企業誘致の積極的な推進」、「総合的観光施策の充実」、「少子化対策」及び「市民の安全安心対策」を重点項目とし、積極的に事業を行ってまいりました。いよいよ6期目、20年を迎えた本市の次の4年も、時代とともに変化する様々な行政課題に柔軟かつ丁寧に対応しながらも、ぶれずに、一歩ずつ着実に前へ進んでまいります。

 

(特色ある教育)

 一つ目は、「特色ある教育」です。

 学校教育では、「20年後も輝く淡路市の教育を創る ~VISION NEXT 20」をテーマに掲げ、タブレット端末を活用した学習環境の整備について、「学びイノベーション事業」から「ミライコネクト事業」に進化し、全国に先駆けて取り組んだ優位性をベースに、更に発展・充実させた一歩先の教育を進めていきます。タブレット端末の活用により、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図るとともに、全国的な課題である不登校児童・生徒への学びの保障を「チーム学校」で取り組んでまいります。

 また、小中9年間の連続性を大切にし、教員の教育研究活動の活性化を図る「あいプロジェクト事業」については、「授業とのであい」、「人とのであい」、「夢(未来)へのであい」を3つの柱とし、新たに、「であいプロジェクト事業」として受け継ぎ、子どもたち個々の特性に応じ、その個性を存分に伸ばせるよう、一人一人に寄り添った温かい教育を、更に進めます。

 本年度に開催される「大阪・関西万博」は、本市の子どもたちにとって、世界と未来が近くなり、生徒自身の将来のキャリア形成を考える学びの機会として生かすため、県の「万博子ども招待プロジェクト」を活用しながら、中学生の社会見学について支援を行います。

 また、小中学校の環境整備では、ふるさと納税を活用し、小学校では老朽化した遊具の更新やトイレの洋式化を進め、中学校では「部活動の地域展開」に向けた設備の改修などを計画的に実施します。

 さらに、全ての小中学校の教室へのエアコン設置については、既に完了していますが、学校行事、部活動等における熱中症対策として、また、市内5つの中学校の体育館が災害時における避難所に指定されていることを踏まえ、体育館への空調設備の設置についても、新たに進めていきます。

 

(企業誘致の積極的な推進)

 二つ目は、「企業誘致の積極的な推進」です。

 本市は、阪神間に隣接した地理的な優位性と、優秀な人材育成に適した緑豊かな自然環境、島特有の海に囲まれた眺望が強みです。また、「大阪・関西万博」の開催や、統合型リゾートによる大阪湾ベイエリアの開発など、本市の可能性を広げる追い風が吹いています。

 これまでの企業誘致により、東海岸(東浦)では、夢舞台サスティナブル・パークや津名産業用地を中心に、製造業等の立地が進んでいます。加えて、パソナグループの淡路島本社機能の誘致により、雇用の創出と社会的要因における人口増加など、市税の増収へとつながり、地域経済の活性化へと結び付いています。今後も、地域の意向を十分に踏まえながら、観光振興や定住促進につながる企業等の誘致を更に進めるため、旧東浦グラウンド、旧佐野会館、旧生穂第二小学校など、遊休地や遊休施設の積極的な利活用を図ってまいります。

 西海岸(西浦)では、観光振興につながる飲食店が立ち並び、新たな賑わいが創出されています。「隣にあるリゾート地」として、阪神間を中心に根強い人気があり、交流人口も堅調に推移しています。「大阪・関西万博」の効果を一過性のものにすることなく、持続可能な地域経済の発展と、地域活性化を目指します。

 

(総合的観光施策の充実)

 三つ目は、「総合的観光施策の充実」です。

 淡路島を訪れる観光入込客数は、島全体で年間約1,330万人となっていますが、そのうち、約7割を超える約960万人が本市を訪れています。観光客の市内周遊の促進や、公共交通などの課題に対しては、商工会との連携により、淡路市デジタルマップ「あデジ」を運用しており、デジタル技術を活用した課題解決を図っていきます。

 「大阪・関西万博」における兵庫県の取組として、「ひょうごフィールドパビリオン」が開催され、市内では、現在、10の体験プログラムが認定されています。民間事業者が、万博会場の夢洲と市内の港を結ぶ海上航路の開設を予定しているなど、国内外からの万博の来場者を淡路島へといざなうような準備ができています。

 また、国の交付金を活用し、近畿圏の「隣にあるリゾート地」というコンセプトで、「となリゾート。淡路市」のキャッチコピーにより、JR西日本の主要駅構内や関西国際空港での観光プロモーションや、アバターによる観光案内業務などを継続します。淡路島3市等と共同で「大阪・関西万博」の会場に出展し、淡路島の魅力をPRするなど、万博と連携した取組を積極的に展開します。

 さらに、岩屋から大町にかけて縦断する古道(古い道)を活用したウォーキングイベントを開催するなど、「都市近郊田園観光都市」を目指し、新たな文化・観光資源につながる取組についても行ってまいります。

 

(少子化対策)

 四つ目は、「少子化対策」です。

 少子化は、国全体の喫緊の課題であり、生産年齢人口の減少と高齢化を通じて、社会経済に大きな影響を与えています。

 国では、急速に進む少子化・人口減少に歯止めを掛けるため、令和5年4月にこども家庭庁が発足し、「こども大綱」を策定して、「異次元の少子化対策」を進める取組が行われています。

 本市においても、子育て世帯が抱える不安や負担は多様性を増しており、きめ細やかな対応が求められています。

 令和7年度からは、「淡路市子ども・子育て支援事業計画(第3期)」がスタートします。新たな支援策としては、退院直後の母子に対して、心身のケアや育児サポートなどの支援を行う「産後ケア事業」の拡充や、未就園児を対象に、保護者の就労要件等を問わず、一定の利用時間において預かり保育を行う「こども誰でも通園制度」を実施します。さらに、子育て世帯の経済的負担を軽減するため、国の臨時交付金を活用し、保育園の副食費を無償にします。

 子どもの医療費助成については、既に高校生世代まで無料としていますが、全ての子どもたちを支援するため、所得制限を撤廃することといたします。

 今後とも、子育てのニーズを的確に捉え、安心して子どもを産み育てることができる環境づくりを、最優先に推進してまいります。

 

(市民の安全安心対策)

 五つ目は、「市民の安全安心対策」です。

 市民が快適で安全安心に生活できる基盤の整備は、現場行政を預かる基礎的自治体として、果たすべき役割の根幹と捉えています。

 政府の地震調査委員会は、「南海トラフ巨大地震」の今後30年以内の発生確率を、「80%程度」に引き上げたことを発表しました。市民の安全安心を守る基礎的自治体として、その備えには万全を期さなければなりません。

 能登半島地震等での災害対応を教訓とし、災害時におけるトイレ環境を整備するため、新たにトイレカーを購入します。また、身近な場所での避難を想定し、町内会等の集会所の届出避難所登録制度を推進するため、必要な改修等に対して補助する「身近な避難所整備事業補助金」を継続します。

 生活基盤の整備では、淡路市斎苑「緑風の里」の供用開始により、廃止となった旧火葬場について解体・撤去を行い、隣接する墓地の駐車場として有効活用を図ります。

 今後とも、市民一人一人の自立と地域の絆を更に深め、市民住民、地域、行政が一体となった安全安心なまちづくりを推進します。

 

 以上の重点5項目を柱として、成熟した市政運営と、新たな課題の解決を図り、「未来につなぐ輝く淡路市」の実現に向けて、粉骨砕身の覚悟で取り組んでまいります。

 

【第2次淡路市総合計画・後期基本計画(2022-2026)】

 令和4年度から、「第2次淡路市総合計画」の「後期基本計画」がスタートしました。

 「後期基本計画」の策定に当たっては、人口減少社会、少子高齢化の進展、ICTの進化など、本市を取り巻く環境が日々刻々と変化する中で、現状を的確に捉えて策定しています。

 市制20周年を迎える本市が、新たなステージへと進むため、「総合計画・後期基本計画」を指針とし、成熟した市政運営に努めてまいります。

 それでは、「後期基本計画」に基づいた、今後の取組について、触れてまいります。

 

〔第1章 共に築く次世代につなぐまち(共生・協働・行政経営)〕では、一人一人がお互いを尊重し、市民の誰もが自分らしく活動できる共生社会の実現と、市民の誰もが主体的に参画する、協働によるまちづくりを進めます。

 また、市民自らが築く、次世代につなぐまちづくりの実現に向け、効率的で効果的な市政運営に取り組みます。

 主要施策として、「互いに尊重する共生社会の実現」では、「人権まちづくり基本計画」、「第3次男女共同参画プラン」に基づき、学びの機会の充実による意識啓発、性的マイノリティに対する差別や偏見をなくす人権教育など、多様性を認め合い、差別のない共生社会の実現を目指し、「誰一人取り残さない」持続可能な社会の実現に取り組みます。

 「協働によるまちづくりと交流の促進」では、市民による積極的な地域運営が図られるよう、市制20周年を記念し、「まちの魅力度アップ支援事業補助金」を拡充するなど、地域運営に関する課題解決に向けた取組や、交流事業に対して支援します。

 「持続可能な行政経営の推進」については、人事評価制度の活用や職員研修の充実により、意欲と行動力のある職員の育成に努めるとともに、「公共施設等総合管理計画」に基づき、既存施設の適正化を図り、身の丈に合った行財政運営を推進します。

 また、ふるさと納税による財源の更なる確保についても、引き続き積極的に進めてまいります。

 

〔第2章 安全安心で快適に暮らせるまち(定住環境)〕では、安全安心で快適な生活を営むため、生活基盤の計画的な整備を進めるとともに、これまでの自然災害の教訓を踏まえ、防災体制の強化と、市民の防災意識の高揚を図ります。

 主要施策として、「定住拠点の整備」では、全ての世代の人が住んで良かった、住み続けたいと思えるまちづくりに向け、積極的な企業誘致による雇用機会の創出に努めます。また、空き家バンクへの登録を促すため、登記や家財の整理などに要する費用の一部を助成する制度を新たに設けるなど、移住から定住につなぐ取組を進めます。

 「道路交通網の整備」では、市道の維持補修に加え、児童・生徒の通学路の安全確保、自転車の通行空間の整備といった交通安全対策についても計画的に実施します。また、県道の改良についても、県と連携・協力しながら進めてまいります。

 「公共交通機関の充実」では、生活観光バス「あわ神・あわ姫バス」の早朝便により高校生の通学手段を確保するほか、災害時を想定して複数のルートを確保する観点に併せ、物価高騰対策として、明石海峡航路の運航に対する助成を実施します。

 「上水道の整備」では、淡路広域水道企業団と連携を図り、災害に強い水供給体制を推進し、「下水道の整備」では、処理場をはじめとした施設・設備の更新を進めるとともに、津名地区及び北淡地区において面整備を計画的に行っていきます。

 「地域におけるデジタル化の推進」では、ホームページ、動画、SNSを活用した情報発信のほか、デジタル技術を活用した戸籍事務の効率化など、行政サービスの利便性の向上を進めます。

 「安全安心対策の強化」では、ため池の決壊や河川の氾濫による水災害を未然に防ぐため、農村地域防災減災事業や緊急自然災害防止対策事業、緊急浚渫推進事業などにより、ため池の計画的な点検・調査と耐震化、河川の土砂撤去や護岸改修を進めます。

 ソフト面では、防災訓練による市民の防災意識の高揚や地域防災リーダーの育成など、防災体制の強化に取り組みます。

 また、公共施設への防犯カメラの設置を進めるほか、特殊詐欺の被害が増加している現状を踏まえ、自動録音機能付電話機の購入経費に対する補助を継続します。

 

〔第3章 支え合い健やかに暮らせるまち(保健・医療・福祉)〕では、市民の誰もが、いつまでも心身共に健康で生きがいを持ち、住み慣れた地域で支え合いながら安心して暮らせるまちづくりを進めます。

 また、北淡総合福祉センターなど、地域福祉の拠点である福祉施設の大規模改修等を行い、高齢者、障がいのある人や子どもとその家庭を地域で支え合い、地域が一体となって支援する環境の充実を図ります。

 主要施策として、「健康づくりの推進」では、「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」の達成に向け、40歳検診フルセット無料事業を新たに実施するなど、健康診査等の受診による早期発見、生活習慣の改善による疾病予防と重症化予防に向けた支援に取り組みます。

 こころの健康づくりや母子保健では、切れ目のない支援が必要であることから、関係機関と連携し、相談、支援体制の充実を図ります。

 「支え合う地域福祉の推進」では、「住み続けたい地域共生のまち淡路市」を基本理念とする「第4期地域福祉計画」に基づき、社会福祉協議会や民生委員・児童委員等と連携し、地域で助け合い支え合う、誰もが尊重されるまちづくりを推進します。

 「高齢者福祉の充実」では、いつまでも住み慣れた地域で安心して元気に暮らすことができるよう、「地域包括ケアシステム」の充実や、「いきいき100歳体操」をはじめとした介護予防事業を推進するほか、聴力が低下した高齢者を対象に、補聴器の購入に対する助成事業を新たに実施します。

 また、老人クラブが取り組む、高齢者の知識や経験を生かした子育て支援や見守り活動等の社会活動を支援します。

 「障がい者福祉の充実」では、障がいのある人が自らの望む地域生活が営めるよう、「生活」と「就労」に対する支援の充実を図るとともに、社会的障壁を取り除くため、合理的な配慮の提供に取り組みます。

 「出会いから子育てにつなぐ一貫した支援の充実」では、「こどもサポートセンターおむすび」における、妊娠期から子育て期にわたる一貫した支援体制により、母子保健と児童福祉の一体的・包括的な支援を行います。

 また、全ての人が安心して利用できるよう、公園の遊具等を改修するほか、学童保育の実施時間を午後7時まで延長するなど、子育てしやすい環境づくりに積極的に取り組みます。

 

〔第4章 ふるさと淡路を学び創り育てるまち(教育)〕では、子どもたちが心豊かで、確かな学力と生きる力を身に付け、ふるさとを学び、創り育てるまちづくりを進めます。

 また、子どもから大人まで、多様な学びの場を創出することで、生涯にわたり生きがいを持てる機会の充実を図ります。

 主要施策として、「学校教育の充実」では、豊かな人間性を育み、確かな学力を身に付け、生きる力を育み、創造性を伸ばす教育の充実を図ります。

また、キャリアプランニング能力をはじめ、コミュニケーション能力の育成やグローバル化に対応した教育を推進します。

 「特色ある教育の充実」では、タブレット端末を活用した「ミライコネクト事業」、小中連携・一貫教育の充実に向けた「であいプロジェクト」の新たな取組により教員の資質の向上を図りながら、子どもたちの学ぶ力の向上に取り組んでまいります。

 「生涯学習の充実」では、「ふるさと淡路」を誇りに思う郷土愛の育成を図るため、地域の豊かな歴史・文化・自然に触れる環境づくりに取り組みます。

 また、多様化する市民ニーズに応えるため、市民ボランティアを中心とした図書館サポーター等とともに、市民協働による図書館運営を進めていきます。

 「スポーツ・レクリエーションの充実」では、生涯を通じて気軽にスポーツを楽しむことができるよう、スポーツ協会やスポーツ推進委員、スポーツクラブ21などの活動を支援し、スポーツを通じた地域コミュニティづくりを推進するとともに、本市にゆかりのあるスポーツ親善大使を通じ、市民のスポーツへの関心を高めます。また、女子野球タウン協定に基づき、女子野球の普及・発展、地域活性化に向けた活動を支援します。

 生穂新島運動公園では、スポーツを楽しめる多目的広場などを整備していますが、新たに、スケートボードやバスケットボールも楽しめるよう、スポーツパークを整備していきます。

 さらに、少年少女がスポーツを楽しめる環境づくりとして、設備や備品の購入や、全国大会等への出場に係る経費の補助制度を新たに設けます。

 

〔第5章 地域資源と地域活力があふれるまち(産業)〕では、豊かな自然環境を守り育てる循環型社会や、再生エネルギーの活用に向けた取組により、環境先進地として、持続可能な社会づくりを進めます。

 また、歴史文化や特産物などの地域資源を磨き上げ、更なる活用を図ることで、地域や産業の活性化と連携が図られる地域経済好循環型のまちづくりを進めます。

 主要施策として、「環境先進地への取組」では、2050年脱炭素社会「ゼロカーボンシティ」を目指し、ため池への太陽光発電設備の設置に対して補助するなど、脱炭素先行地域づくりを進めます。

 ごみ減量化の取組では、「ごみ活推進プロジェクト」として、可燃ごみの集積箱を設置する町内会等への補助や、生ごみ処理機等の購入について支援するほか、草木ごみをたい肥として資源化する事業を進め、ごみの発生抑制、減量化・再資源化を推進します。

 「農漁業の活性化」では、農業経営のスマート化や農地の有効活用、新たな市民農園の整備、漁業経営の基盤強化、多彩なツーリズム資源を活用した地域経済の活性化に取り組みます。

 特に、「農業を守る!イノシシ被害防止総合対策事業」として、有害鳥獣駆除における捕獲単価の見直しや、捕獲に関する資材等の助成の拡大など、有害鳥獣捕獲の拡大に取り組みます。

 「商工業の活性化」では、淡路市ビジネスサポートセンターでの経営相談を実施することで、商工業者が抱える課題の解決に努めるとともに、移住者等の起業などに向けた支援に取り組み、地域の活性化につなげます。

 また、中小企業等の人材確保を図るため、奨学金の返済を支援する補助制度や、多様な雇用機会の創出を図るスキマ時間マッチング事業に対する補助制度を創設するとともに、事業継承に要する初期投資の支援制度を整備するなど、地元企業の支援に努めます。

 「歴史文化・観光資源の活用」では、「世界的観光立島・淡路市」の実現に向け、国の交付金等を活用し、JR西日本の主要駅構内や、関西国際空港における観光プロモーション事業など、積極的なインバウンド等の誘客に取り組みます。

 また、文化財の活用では、舟木遺跡の保存と活用を図るため、「遺跡保存活用計画」に基づき、具体的な整備計画の策定に取り組みます。

 

 「淡路市総合計画」は、市政運営の基本となる市の最上位計画であり、社会潮流の変化、本市を取り巻く状況を踏まえ、あらゆる課題解決に向けて策定していることから、これまでに述べた施策に、スピード感をもって、積極的に取り組んでまいります。

 

(むすび)

 かつて、津名郡5町が合併という手法を選択したのは、自らの力で、自らの地域の経営を続けていくためでした。阪神・淡路大震災の復旧・復興関連に要した多額の市債残高を抱える中、財政的に破綻寸前の状態であった新生淡路市のリーダーに求められたのは、行政経験に基づいた確かなリーダーシップと正義感、半分よそ者の視点からの公平・公正な行政運営を進めることができる力量でした。そして、心に刻んだのは、「義理を尽くし、屈辱に耐えて、したたかに生きる。」という言葉です。

 「行政は正義でなければならない」という言葉を私に教えてくれた、故貝原俊民・元兵庫県知事に、5町合併の新生淡路市長選挙へ臨む決意を報告した際、「門ちゃん、20年はかかるよ。」という、はなむけの言葉を掛けられました。その言葉の意味を、改めて思い返しながら、ようやく、新時代の淡路市の礎を築くことができたと自負しています。

 合併から20年が過ぎ、合併特例措置の終了に伴う「第二の財政危機」を回避し、持続可能な市政運営を行っていくためには、理論先行の国・県の動きに協調し、連携しながらも、現場行政を預かる市長が、ぶれずに正しく的確に判断することが求められます。「行政は正義でなければならない。」という言葉を肝に銘じ、時代とともに刻々と変化していく様々な課題を前に、将来に責任を持つ、時の市長として、「いつかきっと帰りたくなる街づくり」の実現に向け、今後とも全身全霊をかけて、市政運営に取り組んでまいる所存です。

 

 最後になりましたが、議員の皆様におかれましては、二元代表制の下、議会と執行機関が両輪となり、円滑な市政運営ができますよう、なお一層の御指導と御支援をお願い申し上げ、また、市民住民の皆様方の格別の御理解と御協力を重ねてお願い申し上げまして、令和7年度の施政方針とさせていただきます。