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令和6年度 淡路市長施政方針

印刷用ページを表示する掲載日:2024年3月1日更新
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(はじめに)

 はじめに、元日に発生しました令和6年能登半島地震により、お亡くなりになられた全ての方々のご冥福を、心からお祈りいたします。

 また、被害に見舞われ、避難先や仮設住宅で強いストレスを感じながら生活されている被災者の方々に、改めてお見舞いを申し上げます。

 厳しい寒さの中、行方不明者の捜索活動や救命救助活動、医療・福祉などの救援活動、道路や水道などインフラの復旧活動など、被災地支援に携わる全ての方々に心からの敬意を表します。

 29年前に、本市を震源地として発生しました阪神・淡路大震災に際し、当時の兵庫県知事であられた故貝原 俊民知事が提唱された「創造的復興 Build Back Better」の理念は、震災のレガシーとして昇華をされ、後の東日本大震災や熊本地震など、また、世界的にも引き継がれています。この度の能登半島地震による被災状況を見るにつけ、復興までの道のりは、長く険しいものとなるでしょうが、千里の道も一歩から始まることを信じ、一歩ずつ着実に「創造的復興」への歩みを重ねることを期待しています。

 本市におきましても、平地が少なく、海岸線に集落が点在するという、類似した地形で発生した能登半島地震の課題を、近く発生が予測される「南海トラフ巨大地震・令和の大地震」への備えとして、生かさなければならないと決意を新たにしたところです。

 

 さて、平成17年4月1日に淡路市が誕生してから、本年4月で19年を迎え、来年2025年(令和7年)には、市制20周年、阪神・淡路大震災から30年の節目の年となります。また、大阪・関西万博を控え、大阪湾ベイエリアの一翼を担う本市にとりまして、世界各国から訪れる万博来場者を、本市へと誘(いざな)い、地域経済の活性化へとつなげなければなりません。

 

(これまでの歩み)

 これまで、市制発足時から段階的に目標を定め、戦略・戦術をもって取り組んでまいりました。

 市制発足時に定めた基本方針は、

一つは、集約のメリットを生かし、質の向上を目指す。

二つは、5地域の融和を図り、一体感の醸成を目指す。

三つは、継続的財政運営と市政全般の適正化を目指す。

 これらを基本姿勢として、公平・公明・公正な行政サービスを実行してまいりました。

 そして、4年を一つの区切りとして、それぞれにスローガンとマニフェストを定め、その実現にも努めてまいりました。

 

 まず、1期目です。

 2005年(平成17年)から2008年(平成20年)のスローガンは、「明石海峡大橋無料化」で、島民会議を立ち上げ、交流人口の増加、観光の活性化へとつなげました。

 マニフェストは、「ふるさと五弁の花の集約」で、事業実績としましては、市民の一体感を醸成する中で、地域格差の解消を図り、地域のバランスに配慮した整備に努めました。

 

 2期目、2009年(平成21年)から2012年(平成24年)のスローガンは、「世界的観光立島・淡路市」で、マニフェストは、「身の丈に合った市政運営」でした。

 事業実績としましては、企業誘致では、都市部に近く、自然環境豊かな本市の優位性を、トップセールス活動などでピーアールし、市内外から多くの企業進出や拡充につなげ、新たな雇用の場を創出してまいりました。その成果は、社会的要因による人口増加と市税の増収につながり、地域経済の活性化へと結び付きました。

 観光施策では、未利用施設となった旧野島小学校が、後の西海岸(西浦)の活性化につながる拠点施設となり、観光振興の原点を築くことができました。

 また、行財政改革では、危機的な財政状況から脱却をし、財政基盤を確かなものとするため、更なる歳入の確保と歳出の整理を断行し、基礎を強固にしました。

 

 3期目、2013年(平成25年)から2016年(平成28年)のスローガンは、「淡路島を世界遺産に」、マニフェストは、「いつかきっと帰りたくなる 街づくり」でした。

 この街づくりの将来像には、大きく三つの思いを込めています。

 一つは、市民住民のため。

 今、住んでいる私たちが、安全安心で快適に生活でき、住み続けたくなる街づくり、

 二つは、出身者のため。

 淡路を離れ、島外で頑張っている人たちが、いつかきっと帰ってきて住みたくなる街づくり、

 三つは、来島者のため。

 訪れた人たちが、住んでみたくなる街づくりであります。

 

 事業実績としましては、教育では、「国生みの島・淡路」を構成する風土資産をストーリー化し、日本遺産認定へとつなげました。

 企業誘致では、東洋合成工業淡路工場、プライミクス本社工場等が操業しました。

 また、市民生活の利便性向上対策では、「まりん・あわじ号」の建造や、「あわ神あわ姫号」による生活観光バス・淡路市バスの運行により、市民生活に欠かせない公共交通手段を確保するとともに、観光客の利便性と快適性の向上へとつなげました。

 

 4期目、2017年(平成29年)から2020年(令和2年)のスローガンは、「身の丈に合った田園都市の構築」で、マニフェストは、「いつかきっと帰りたくなる 街づくり」の更なる推進でした。

 事業実績としましては、一つ目に、市民サービスの利便性向上のため、津名ふれあいセンターや北淡事務所を整備して、5地区のバランスに配意した現地解決型の事務所体制を完成させました。

 二つ目に、安全安心の生活環境づくりでは、高校生の通学や高齢者等が、いつまでも住み慣れた地域で生活できる基盤として、最も重要である交通手段を確保するため、生活観光バス「あわ神あわ姫号」の市域全域への路線拡大を行いました。

 三つ目に、夢のある市の環境づくりとして、日本で初めての民間施設直結型スマートインターチェンジの開設、国指定史跡五斗長(ごっさ)垣内(かいと)遺跡(いせき)鍛冶工房の復元、岩屋海水浴場利便施設の新築など、利便性の向上と観光振興につながる整備を行いました。

 

 そして、市制20周年へと向かう5期目、2021年(令和3年)から2024年(令和6年)のスローガンは、「未来に繋(つな)ぐ輝く淡路市」、マニフェストは、「いつかきっと帰りたくなる 街づくり」の更なる推進でありました。

 

 これまで市民と一体となって進めてきました「チーム淡路市」の取組は、2023年ブランド総合研究調査による市区町村魅力度ランキングで、全国60位と高い評価を得ました。

 

 また、兵庫県立大学地域経済指標研究会による検証では、2007年から2022年までの、16年間の企業誘致による経済波及効果が、約4,000億円に上(のぼ)ると推計されています(生産誘発額4,025億円、付加価値誘発額1,554億円)。

 更に、昨年9月30日の日本経済新聞では、本市の2012年度と2022年度を比較した個人所得の伸び率が、関西の自治体でトップになったと紹介をされています。数字は嘘を言いません。これらを糧に、淡路市は、更に一歩前へ進まなければなりません。

 

 いよいよ、「はたち」を迎える5期目の最終年度。

 令和6年度は、市制20周年への準備とこれまでの取組の検証を踏まえ、新たなまちづくりの方向性を、市民とともに創造する「継続から創造 新たな淡路市へ」をテーマに、7項目の課題に取り組んでまいります。

 

 一つ目の課題は、「南海トラフ巨大地震への備え」です。

 本市の地形とよく似た、能登半島で発生した地震では、海岸線に点在する集落を結ぶ幹線道路が通行不能となり、多くの孤立集落が発生をして、長く支援の手が届かない状況が続きました。半島防災の在り方が見直されつつあり、身近な集落単位に避難所機能を確保する必要性が高まっていることから、町内会等の集会所の改修支援をこれまで以上に早急に実施します。

 また、来年1月17日に「阪神・淡路大震災」発生から30年の節目を迎えることから、北淡震災記念公園の施設整備を行い、震災の記憶を風化させることなく、後世へと語り継ぐ取組を支援します。

 

 二つ目の課題は、「ポストコロナ」です。

 昨年の5月に、感染症法上の位置付けが、5類へ移行してから、様々な交流やイベントが復活をしています。コロナ禍により休止していました海外姉妹都市、友好都市との交流事業の再開や、地域の活力を取り戻すため、市民が主体的に行うイベントへの助成、AIやデジタル技術を活用した市役所窓口業務の見直し、淡路市マスコットキャラクターによる観光プロモーションやアバターを活用した観光案内所の拡充等、コロナ禍による新たな生活様式に対応した施策に取り組みます。

 また、コロナ禍等により増加した不登校児童生徒への対策として、支援が必要な子ども一人一人に寄り添った、見守り体制の強化に努めます。

 

 三つ目の課題は、「輝く淡路市 市制20周年への準備と検証」です。

 市制20周年の準備として、これまでの取組の検証を行い、この先10年のまちづくりの方針を、市民とともに築いていくため、市政報告会を重ね、多くの方々の意見を市政へと反映させていきます。

 また、阪神・淡路大震災発生から30年の節目の年を迎えることから、これまでの大規模災害を教訓として、「南海トラフ巨大地震」への備えとして、「自助、共助」の市民意識の高揚に努めます。

 市制施行後、残された最後の課題として、まちづくりを計画的に進めるための道しるべとなる都市計画マスタープランの改定を行い、都市計画区域の見直しへとつなげていきます。

 

 四つ目の項目は、「大阪・関西万博との連携」です。

 国内外から訪れる大阪・関西万博への来場者を、淡路島へ誘(いざな)うため、企業版ふるさと納税を活用した映画製作によるシティプロモーションや、主要交通拠点でのデジタルサイネージによる観光プロモーション、神戸市と連携した海路実証実験の継続、ひょうごフィールドパビリオンの体験プログラムや市内商工業者と、活況を見せる西海岸(西浦)の飲食店や観光施設を連携させ、相乗効果を生み出す仕掛けづくりを行います。

 

 五つ目の課題は、「ライフステージを通じた子育て支援の充実」です。

 結婚・妊娠期から高校生等の子育て期まで、切れ目のない施策に取り組み、子育て世帯が抱える経済的な不安を軽減できるよう支援をします。

 また、産前・産後の心身の負担軽減を図るため、ケア事業の充実や安心して出産・子育てができるよう、伴走型の相談支援体制を強化させます。

 特別な支援が必要な子どもや家庭への相談、支援を充実させ、誰もが安心して子どもを生み育てたいと感じるまちづくりに全力で取り組みます。

 

 六つ目の課題は、「市内事業者等への支援」です。

 市内事業者が直面する課題である人材確保や住居確保対策への支援、多様な経営課題に対する相談体制の強化、新規起業や事業承継に関する支援、異業種間や誘致企業などの新規に起業した事業所と、地元事業者を連携させ、新たなビジネスチャンスを創出する工夫など、関係団体と協力をしながら、事業者のニーズに対応した施策を展開します。

 

 七つ目の課題は、「多くの方々に支援いただいている「ふるさと納税」の有効活用」です。

 平成20年度(2008年)の制度開始から、昨年12月31日までにいただいた寄附額が、累計で100億円を突破いたしました。この間にご寄附いただきました件数は、約72万件で、令和6年度中には、累計100万件を突破すると思われます。これまで重要視してきました寄附件数は、本市の関係人口が増加していることを表(あらわ)しています。本市への関心から、淡路島を訪れ、住んでみたい、住み続けたいと思っていただく「いつかきっと帰りたくなる 街づくり」を実現するものです。これからも、本市の取組を末長く応援いただけるよう、市民住民の満足度や幸福感を高める事業を展開するとともに、新たな産品開発を支援し、地域の活性化につなげていきます。

 

 これら7項目の課題を実現し、5期目スローガン「未来に繋(つな)ぐ輝く淡路市」の実現へとつなげます。

 

(経済情勢、財政状況)

 次に、国の令和6年度予算編成の基本方針では、「我が国経済は、コロナ禍の3年間を乗り越え、改善しつつある。30年ぶりとなる高水準の賃上げや企業の高い投資意欲など、経済の先行きには前向きな動きが見られており、デフレから脱却できる千載(せんざい)一遇(いちぐう)のチャンスを迎えている。

 他方、賃金上昇は物価上昇に追いついておらず、個人消費は依然、力強さを欠いている。これを放置すれば、再びデフレに戻るリスクがあり、また、潜在成長率が0パーセント台半ばの低い水準で推移している課題もある。」としています。

 そのような中で、「「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を速やかに実行して、「新しい資本主義」の旗印(はたじるし)の下、社会課題の解決に向けた取組自体を、成長のエンジンに変えることで、「成長と分配の好循環」の実現を目指す。」としています。

 重要な政策課題としましては、

 (1) 「持続的で構造的な賃上げ」

 (2) 「科学技術の振興及びイノベーションの促進」

 (3) 「グリーントランスフォーメーション(GX)や、デジタルトランスフォーメーション(DX)、半導体・AI等の分野での国内投資の促進」

 (4) 「若者・子育て世代の所得向上」

 (5) 「質の高い公教育の再生」

 (6) 「2050年カーボンニュートラルを目指したグリーン社会」

 (7) 「2025年大阪・関西万博に向けた着実な準備」

などに取り組むことが示されています。

 

(本市の財政状況)

 次に、本市の財政状況ですが、令和4年度の決算におきまして、市制発足以来18年連続の黒字決算を堅持しました。基金残高では、一般会計で過去最高額となる169億円を確保しました。

 一方で、地方債残高は、過去最少となる345億円まで減少させることができました。財政健全化指標も着実に改善をしています。

 「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」が制定された平成19年度決算における実質公債費比率 24.0%、将来負担比率 371.0%をピークに、年々改善を図っています。

 

 令和4年度決算では、実質公債費比率は13.8%、前年度比で0.4ポイント改善、将来負担比率は74.5%、前年度比で26.7ポイントと、着実に改善を進めました。

 しかし、全国的に見ますと、依然として高い比率となっており、引き続き、行財政改革を積極的に推進をして、事業の必要性や緊急性の十分な検討はもちろんのこと、公共施設の集約や複合化、公営企業等の使用料の適正化による収入の確保など、財政健全化に向けた取組を進めてまいります。

 

(重点項目)

 第2次淡路市総合計画に掲げる市の将来像「いつかきっと帰りたくなる街づくり」の実現に向けた戦略・戦術として、「特色ある教育の充実」、「企業誘致の積極的な推進」、「総合的観光施策の推進」、「少子化対策」及び「市民の安全安心対策」に取り組みます。

 

(特色ある教育)

 一つ目は、「特色ある教育」です。

 子どもたちを取り巻く環境は、グローバル化や科学技術の進歩など、日々変化を遂げています。教育現場においても、安全で信頼される教育環境や、全ての子どもたちの可能性を引き出し、個別最適な学びと協働的な学びを実現する教育が求められています。

 そのため、学校教育では、全国的にも高い評価を得ているタブレット端末を活用した「学びイノベーション事業」により、確かな学力の育成に努めるとともに、全国に先駆け、取り組んだ優位性を、更に発展充実させた一歩先の教育を検討します。

 また、小中9年間の連続性を大切にし、一貫教育の充実を図る「あいプロジェクト」を継続し、子どもたち個々の特性に応じ、個性を存分に伸ばせるよう、一人一人に寄り添った教育を進めます。

 学校教育を取り巻く課題としまして、「いじめ」、「不登校」等、様々な問題が起こっており、相談や支援体制の充実が必要なことから、市内中学校等に「校内サポートルーム」の整備を進め、不登校児童生徒支援員を配置します。

 また、食育を通じて児童・生徒の健康な心と身体(からだ)を育成するため、学校給食で使用する地場産品使用率を高める「夢と希望の学校給食プロジェクト」に取り組みます。

 社会教育分野では、阪神・淡路大震災の記憶の継承や、防災教育につなげるため、VR技術を活用した地震体験装置等を整備します。

 

(企業誘致の積極的な推進)

 二つ目は、「企業誘致の積極的な推進」です。

 本市は、阪神間に隣接した優位性と優秀な人材育成に適した緑豊かな自然環境、島特有の海に囲まれた眺望が強みです。また、大阪・関西万博の開催やカジノを含む統合型リゾートの誘致による大阪湾ベイエリアの開発など、本市の可能性を広げる追い風が吹いています。

 これまでの企業誘致により、東海岸(東浦)では、夢舞台サスティナブル・パーク及び津名産業用地を中心に、製造業等の立地が進んでいます。加えて、パソナグループの淡路島本社の誘致により、雇用の創出と社会的要因による人口増加、市税の増収へとつながり、地域経済の活性化へと結び付いています。

 西海岸(西浦)では、観光振興につながる飲食店が立ち並び、賑わいを創出し、「隣にあるリゾート地」として阪神間を中心に根強い人気を背景に、交流人口も堅調に推移をしています。

 製造業を中心とした企業誘致に加え、観光振興につながる施設の誘致を進めるため、遊休地や遊休施設の積極的な利活用を図ってまいります。

 更には、大阪・関西万博を一過性のものにすることなく、持続可能な地域経済の発展と地域の活性化を目指します。

 

 

(総合的観光施策の推進)

 三つ目は、「総合的観光施策の推進」です。

 淡路島を訪れる観光入込客数は、コロナ禍以前の令和元年度では、年間約1,260万人で、その約7割に当たる約880万人が本市を訪れています。

 その多くは、西海岸(西浦)にある飲食店等を中心とした観光施設が、主な目的地となっていることから、主要な目的地から次の目的地までの間に位置する、あまり知られていない穴場スポットや地元では有名な施設など、すきま時間の利用を促す観光ルートの提案や生活観光バス「あわ神あわ姫号」の利便性を高める施策を検討しています。

 また、大阪・関西万博における兵庫県の取組として「ひょうごフィールドパビリオン」の開催が予定され、島内では16か所、市内6か所の取組が、体験プログラムとして認定されており、万博来場者を淡路島へと誘(いざな)う準備が進められています。

 本市では、阪神間の隣にあるリゾート地として、万博来場者が日帰りで、気軽に立ち寄ることができる立地条件を最大限に生かすため、JR西日本主要駅構内や関西3空港ターミナル内でのプロモーションや、インバウンドの増加などが見込まれることから、大規模災害時の「観光危機管理計画」の策定など、大阪・関西万博と連携した取組を積極的に展開します。

 

(少子化対策)

 四つ目は、「少子化対策」です。

 少子化の進行は、生産年齢人口の減少と高齢化を通じて、社会経済に大きな影響を与えています。

 令和5年6月に国が定めました「こども未来戦略方針」では、少子化は、我が国が直面する最大危機であり、急速に進む少子化・人口減少に歯止めをかけなければ、我が国の経済・社会システムを維持することは難しいと分析されています。若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが、ラストチャンスであり、我が国の持てる力を総動員し、少子化対策と経済成長実現に不退転の決意で取り組むこととしています。

 本市におきましても、子ども・子育て支援に、全力で取り組んでまいります。

 具体的には、児童手当の高校生までの拡充や所得制限の撤廃、児童扶養手当の所得上限の拡大など、国が示す子育て世帯への経済的支援に加え、市独自の支援として、高校生までの医療費無料化の継続、あわ神あわ姫バスを利用して市内高校へ通学する生徒の定期無償化を行うとともに、市外高校へ通学する生徒にも交通費の助成を拡充いたします。

 これらは、環境整備であるとともに、地元の学校への支援として実施をいたします。

 また、結婚・妊娠期から子育て終了まで、ライフステージを通じた、きめ細かな子育て支援を行うため、相談・支援体制を一元化、強化する「こども家庭センター」を新たに設け、子どもや子育て家庭に寄り添った支援の充実に努めます。

 加えて、子育てニーズを的確に捉え、安心して子どもを産み育てることができる環境づくり、地域が一体となり、子育て環境が充実したまちづくりを、最優先に推進してまいります。

 

(市民の安全安心対策)

 最後に、五つ目の「市民の安全安心対策」です。

 目指すべき将来像に掲げる「いつかきっと帰りたくなる街づくり」の実現には、何より、住んでいる人たちが、安全安心で快適に生活でき、住み続けたくなる街でなければなりません。

 誰もが住んで良かった、住み続けたいと思える環境整備、安全安心な生活基盤の整備は、現場を預かる基礎的自治体として、果たすべき役割の根幹と捉えています。

 近い将来、発生が予測される「南海トラフ巨大地震」へ備えるため、町内会等の集会所を臨時的な避難所として活用できるよう、施設の改修支援を行う「身近な避難所整備事業」に取り組みます。

 また、市民に自助意識を高く持っていただき、緊急時に持ち出す必要物品を考える契機となるよう、防災グッズを各世帯に配布する「大規模災害への備え啓発事業」を新たに実施します。

 その他、道路やため池、市営住宅や公民館などの公共施設の強靭化(きょうじんか)に取り組むとともに、地域生活の基盤となる公共交通の維持・充実を図り、交通弱者を切り捨てることなく、県立淡路医療センターまでの南進化に向け、関係機関等と具体的な協議を行い、早期の実現に努めます。

 また、長年の懸案事項でもありました新火葬場が本年4月中に完成をして、7月に供用開始します。

 これまで以上に、市民一人一人の自立と地域の絆を深め、市民住民、地域、行政が一体となった安全安心なまちづくりを推進してまいります。

 

 これら重点5項目を柱として、成熟した市政への基盤の確立を目指してまいります。

 

【第2次淡路市総合計画・後期基本計画(2022-2026)】

 令和4年度から、第2次淡路市総合計画の後期基本計画がスタートしました。

 後期基本計画の策定に当たりましては、人口減少社会、少子高齢化の進展、ICTの進化など、本市を取り巻く環境が日々刻々と変化する中で、現状を的確に捉えて策定をしています。

 後期基本計画を、新たなステージへと進むための指針としまして、成熟した市政運営に努めてまいります。

 

 それでは、後期基本計画に基づいた、今後の取組について、触れてまいります。

 

 〔第1章 共に築く次世代につなぐまち(共生・協働・行政経営)〕では、一人一人がお互いを尊重して、市民の誰もが自分らしく活動できる共生社会の実現と、市民の誰もが主体的に参画する協働によるまちづくりを進めます。

 また、市民自らが築く、次世代につなぐまちづくりの実現に向け、効率的で効果的な市政運営に取り組みます。

 主要施策として、「互いに尊重する共生社会の実現」では、男女共同参画についての学習機会の充実による意識啓発、性的マイノリティに対する差別や偏見をなくす人権教育等、多様性を認め合い、差別のない共生社会の実現を目指し、「誰一人取り残さない」持続可能な社会の実現に取り組みます。

 「協働によるまちづくりや市民交流の促進」では、市政報告会の開催により市民のニーズを把握し、市政へ反映させるよう努めます。また、市民による積極的な地域運営が図られるよう、町内会やボランティア団体の連携によるまちづくり活動を支援します。

 「持続可能な行政経営」につきましては、人事評価制度の活用や職員研修の充実により、意欲と行動力のある職員の育成に努めます。また、公共施設等総合管理計画に基づき、積極的に施設の在り方を整理して、将来負担の少ない身の丈に合った施設の適正化を図ります。

 

 〔第2章 安全安心で快適に暮らせるまち(定住環境)〕では、安全安心で快適な生活を営むための生活基盤の計画的な整備によるまちづくりを進めます。

 また、これまでの自然災害の教訓を踏まえ、防災体制の強化と市民の防災意識の高揚を図ります。

 主要施策として、「定住拠点の整備」では、全ての世代の人が住んでよかった、住み続けたいと思えるまちづくりに向け、積極的な企業誘致による雇用機会の創出、住居不足により人材確保が課題となっている中小企業への支援、市営住宅の空き室を活用した短期移住体験、空き家情報の提供体制や移住相談サポート窓口の充実等を図ります。

 また、本市を取り巻く社会経済動向などの環境が変化してきたことを踏まえ、将来の市の姿を明示し、それを市民、事業者、行政など様々な主体が共有することで、今後のまちづくりを計画的に進められるよう都市計画マスタープランの改定を行います。

 「公共交通の充実」では、生活観光バス「あわ神あわ姫号」と地域コミュニティバスの維持に努め、明石海峡航路とのスムーズな連絡により、利用者の利便性向上に努めます。

 「上下水道・道路等のインフラ整備」では、災害に強い水供給体制や大規模断水に備えた給水体制を確立するため、淡路広域水道企業団と連携を図り、対策の検討を行います。

 また、幹線道路の整備については、災害時でも複数ルートが確保されるよう国、県と連携・協力しながら、整備を推進します。

 「安全安心対策の強化」では、ため池の決壊や河川の氾濫による水害を未然に防ぐため、計画的な点検・調査を行い、耐震改修等に取り組みます。

 ソフト面では、災害時の避難所や避難経路を分かりやすく周知するとともに、防災訓練等により市民の防災意識の高揚や地域防災リーダーの育成、自主防災組織の支援を行うなど、防災体制の強化に取り組みます。

 また、保育所や小中学校の児童・生徒、高齢者を対象とした交通安全教室の開催、消費生活に関する啓発事業による被害の未然防止と相談体制の強化に努めます。

 

 〔第3章 支え合い健やかに暮らせるまち(保健・医療・福祉)〕では、市民の誰もが、いつまでも心身共に健康で生きがいを持ち、住み慣れた地域で支え合いながら安心して暮らせるまちづくりを進めます。

 高齢者、障がいのある人や子どもとその家族を地域で支え合い、地域が一体となって支援する環境の充実を図ります。

 主要施策として、「健康づくりの推進」では、健康寿命の延伸に向け、市民一人一人の健康づくりを支援し、健康診査等の受診による早期発見、生活習慣の改善による疾病予防と重症化予防に努めます。

 こころの健康づくりや母子保健では、関係機関と連携をして、相談、支援体制の充実を図り、切れ目のない支援を推進します。

 「支え合う地域福祉の推進」では、新たに整備をしました福祉会館を拠点に、社会福祉協議会や民生委員・児童委員、ボランティア等との連携を強化し、互いに助け合い支え合う、誰もが尊重されるまちづくりを推進します。

 「高齢者福祉の充実」では、いつまでも住み慣れた地域で安心して元気に暮らすことができるよう、「地域包括ケアシステム」の充実や、「いきいき100歳体操」をはじめ、介護予防事業の充実を図ります。また、高齢者の知識や経験を生かして取り組む老人クラブ等の社会活動を支援して、地域の頼もしい力となるまちづくりを目指します。

 「障がい者福祉の充実」では、ハンディキャップを持ちながら、自らの望む地域生活が営めるよう、「生活」と「就労」に対する支援の充実を図ります。

 「出会いから子育てにつなぐ一貫した支援の充実」では、妊娠・出産・育児に関し、切れ目のない一体的、包括的な支援に取り組み、安心して子どもを産み育てることができる環境づくりや、仕事と育児の両立が可能となる環境整備に取り組みます。

 

 〔第4章 ふるさと淡路を学び創り育てるまち(教育)〕では、子どもたちが心豊かで確かな学力と生きる力を身に付け、ふるさとを学び創り育てるまちづくりを進めます。

 また、子どもから大人まで、多様な学びの場を創出することで、生涯にわたり生きがいを持てる機会の充実を図ります。

 主要施策として、「学校教育の充実」では、豊かな人間性や、確かな学力、生きる力を育み、創造性を伸ばす教育の充実を図ります。

 また、コミュニケーション能力やグローバル化に対応した教育を推進します。

 「特色ある教育の充実」では、タブレット活用教育に代表される「学びのイノベーション」、小中連携・一貫教育の発展充実に向けた「あいプロジェクト」を継続するとともに、その優位性を発展、充実させた、一歩先の取組を検討します。

 「生涯学習の充実」では、ふるさと淡路島を誇りに思う、郷土愛の育成を図るため、地域の豊かな歴史・文化・自然にふれあう環境づくりに取り組みます。

 また、多様な人々が集う、市民協働による図書館運営を行います。

 「スポーツ振興」では、生涯を通じて、気軽にスポーツを楽しむことができるよう、スポーツ協会やスポーツ推進委員、スポーツクラブ21などの活動を支援し、スポーツを通じた地域コミュニティづくりを推進するとともに、本市にゆかりのあるトップアスリートを通じ、市民のスポーツへの関心を高めます。

 

 〔第5章 地域資源と地域活力があふれるまち(産業)〕では、豊かな自然環境を守り育てる循環型社会や、再生エネルギーの活用に向けた取組により、環境先進地として、持続可能な社会づくりを進めます。

 また、歴史文化や地域特産物などの地域資源を磨き上げ、更なる活用を図ることで、地域や産業の活性化と連携が図られるよう、地域経済好循環型のまちづくりを進めます。

 主要施策としまして、「環境先進地への取組」では、2050年脱炭素社会「ゼロカーボンシティ」を目指した脱炭素化モデル事業として、夢舞台サスティナブル・パーク周辺での再生可能エネルギーの創出と、地域自立型エネルギーシステムの構築による、電力インフラの強靭化を目指します。

 ごみ減量化の取組では、木くず・剪定(せんてい)枝(し)等の堆肥化、廃プラスチック等の回収による再資源化の推進により、ごみの発生抑制、減量化・再資源化を推進します。

 「農漁業の活性化」では、6次産業化による特産品開発や販路開拓等への支援、体験型農園や農家レストラン、漁業体験等、多彩な観光資源を活用した、地域経済の活性化に取り組みます。

 また、担い手の確保や耕作放棄地の解消、有害鳥獣対策、稚魚放流やのり養殖業等の資源管理型漁業の推進にも取り組みます。

 「商工業の活性化」では、淡路市ビジネスサポートセンターでの経営相談を実施することで、商工業者が抱える課題の解決に努めるとともに、移住者等の起業や事業承継に向けた支援に取り組み、地域の活性化につなげます。

 また、企業誘致による新たな企業の立地と、地元企業との連携による更なる活性化を図り、雇用の創出等、若者が働きやすい環境を築くことで、社会的要因による人口増へとつなげます。

 「観光振興」では、来年の万博開催を控え、JR西日本の主要駅構内や関西3空港のターミナル内でのプロモーションを行い、インバウンドや首都圏などの遠隔地からの誘客に取り組みます。

 万博と同時に開催する「ひょうごフィールドパビリオン」では、島内から16のプログラムが認定されており、市内では「兵庫県線香協同組合」、「株式会社パソナ農援隊」、「近畿壁材工業株式会社」、「北淡震災記念公園」、「株式会社さの小」、「株式会社夢舞台」の6会場での体験プログラムが認定を受けています。いずれも本市特有の地域資源を活用し、体験型観光を目指すことから、「田園観光都市」の実現にもつながるものとして、積極的に取り組んでまいります。

 

 淡路市総合計画は、市政運営の基本となる市の最上位計画であります。社会潮流の変化、本市を取り巻く状況を踏まえ、あらゆる課題解決に向けて策定していることから、これまでに述べた施策にスピード感をもって、積極的に取り組んでまいります。

 

(むすび)

 本市は、成熟した市へと着実に進んでいます。

 29年前、平成7年に発生しました「阪神・淡路大震災」から、「創造的復興」の象徴として、平成12年に「ジャパンフローラ2000」が開催され、その跡地である夢舞台サスティナブル・パークへの企業誘致が完成し、次世代のまちづくり、持続可能な地域デザインの先進地へと、大型プロジェクトが始動しています。

 また、平成20年(2008年)に、独立就農を目指すパソナチャレンジファームが開設されてから、西海岸を中心に飲食店や観光施設の立地が進み、パソナグループの淡路島本社の誘致へとつながっています。

 

 その時々のストーリーをつなぎ合わせ、新たなストーリーを紡いできた結果、社会的要因による人口の増加、給与所得者の増加や誘致企業による設備投資の増加により、堅調な伸びを示す市税の収入、個人所得の伸びが関西の自治体でトップになるなど、本市の取組が、着実に実を結んでいます。

 

 本市に吹く追い風を更に加速させ、万博を起爆剤として、一過性のものにすることなく、レガシーとして受け継ぎ、次へのステップにすることで、持続性のある地域経済の発展と地域活性化へと導いていかなければなりません。

 最後に、阪神・淡路大震災から30年の節目の年を迎えるに当たり、現在もまだ、復興経費の負担が大きく残ってはいますが、創造的復興を果たした震源地の自治体として、能登半島地震で被災された皆様の希望の灯(あか)りとなれるよう、更に「未来に繋(つな)ぐ輝く淡路市」の実現に向け、取り組んでまいる所存です。

 

 最後になりましたが、議員の皆様におかれましては、二元代表制の下、議会と執行機関が両輪となって、円滑な市政運営ができますよう、なお一層の御協力と御支援をお願い申し上げ、また、市民住民の皆様の格別の御理解と御協力を重ねてお願い申し上げまして、令和6年度の施政方針とさせていただきます。