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令和3年度 淡路市長施政方針

印刷用ページを表示する掲載日:2021年3月1日更新
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(はじめに)

 時の節目の評価は難しい。

 今から160年程前、幕末の京都を駆け抜けた京都守護職、新選組。組織的行動の実質的最後は、函館五稜郭に立て籠もった幕軍の将軍の内、たった一人戦死したとされる副長土方歳三をもって終わるが、その正当性が評価されたのは、百年後の週刊文春、司馬遼太郎の燃えよ剣の連載によります。

 五町合併の淡路市も、市域全体を守り維持するために、身の丈に合った市政運営を断行しなければならず、個々人の利害の視点からすれば、公明公正を旨とする行政は、阻害要因となり軋轢の歴史を刻んできました。

 志を持った多くの執行部の職員も半ばで倒れ、又、語らず、今を迎えています。

 さて、昨年当初から、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が始まり、日本全国に未曾有の被害をもたらしています。兵庫県におきましても、2度の緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出の自粛、飲食店の休業や時短の要請、イベントの中止や規模縮小など、市民の皆様の生活や地域経済に多大な影響を与えています。

 また、県下でも、未だ新規感染者が確認されるなど、医療体制も非常に厳しい状況が続いています。

 このような中、市も市民の皆様の協力の下、1日も早い事態の終息に向け、新型コロナウイルス感染症対策に全力で取り組んでいるところです。感染防止対策に始まり、市民生活や地域経済に対する支援など、地域の実情の十分な把握に努め、約65億円規模の予算編成をおこなってきました。

 今後、新型コロナウイルスワクチンの接種に向け、十分な接種体制を整えることは当然ながら、引き続き、安全安心な生活を守るための必要な施策を躊躇なく実施してまいります。市民の皆様の御協力をよろしくお願い申し上げます。

 今、合併後16年の月日が流れようとしています。それぞれの地域性を持つ5つの町、そこに住む方々の様々な思いの中、今の淡路市があります。

 故郷に対してぶれない思い、その思いを大切にし、絶えず、「自分でいいのか」と自問自答し、真摯に、そして、矜持を持ってその責務に誠心誠意努めてまいりました。

 その間、将来の淡路市に思いを馳せ、今できることに最大限、取り組むことができましたのも、市民の皆様の御理解と御協力があったからこそと、心よりお礼を申し上げます。

 思い返せば、合併の船出に市民に対し誓ったことは、1つは「財政再建」、2つは「5町の融和」、3つは「安全安心対策」でした。合併の目的は、量の縮小を覚悟した上で質の向上を図る。合併の効果を最大限発揮しながら、5町の融和や現場行政の継続性の確保、そして、その先に、市民自らが夢を語ることができる将来像を描くことでした。

 そのため、私なりに、4年を一つの区切りと捉え、それぞれに目標を定め、その実現に向け、現地解決型の行政運営を基本に、戦略と戦術を駆使し、取り組んでまいりました。

 まず、1期目(H17~H20)では、5地域の融和、地域格差の解消、第一次産業を基軸とした地域活性化、合併本来の意味である縮小を覚悟して、量より質を高める行政サービスの実施、「身の丈に合った市政運営」の構築を目指しました。

 それぞれの町を5弁の花に例え、一体感を醸成する中、現地解決型としての行政サービスの集約、バランスに配意した地域整備を進めました。

 一体感の醸成では、代替道路のない国道は無料であるとの信念から、明石海峡大橋無料化運動を積極的に推進をし、料金の低減化や観光の活性化につなげています。また、地域整備、集約では、国の財源を有効に活用し、防災拠点と給食配食センターの機能を一体化させ、新たに市民交流センターとして整備をしました。

 また、これまで培った行政経験を最大限に生かし、危機的な財政状況からの脱却、赤字の回避、身の丈に合った財政基盤の構築に最大限努めました。

 次に、2期目(H21~H24)では、維持した財政再建に更なる歳入の確保と歳出の整理を断行し、財政運営の基盤を強固にする中、施策の柱となる企業誘致の積極的な展開、後継者育成としての特色ある教育の推進により、淡路市の優位性の実証に努めました。

 企業誘致では、都市圏に近く自然豊かな地域的特性に加え、市独自の支援制度の創設、個別企業訪問やトップセールスなどの戦略、戦術により、多くの市外企業の誘致、市内企業の新設、拡充につなげ、市民の雇用の場を確保しています。その効果は、現在も継続し、合併以降、市内企業も含め53社の誘致、新設及び拡充の実績へとつながり、地域経済の柱へと育っています。

 また、情報化社会を生き抜くための教育、後継者育成として、小中学校の情報教育を推進しました。教員の資質向上とタブレットの普及など、教育環境の整備について、ソフトとハードの両面から取り組みました。このことは、2019公立学校情報化全国ランキング小学校第2位、中学校第5位としての評価へとつながっています。

 なお、厳しい財政状況であっても地域の基盤整備は必要不可欠であることから、文化教育拠点の整備の一環として、淡路文化会館の隣接地に一宮中学校体育館と市民体育館の両機能を併せ持つ、一宮体育センターを整備しました。

 3期目(H25~H28)では、不効率な地形による地域の課題解決に向け、ダブルスタンダードの視点から施策を展開し、地域の魅力向上を目指しました。自然豊かな観光資源あふれる淡路島のゲートシティ、わくわく感のある「世界的観光立島・淡路市」の実現に向け、日本女子プロ野球・兵庫ディオーネの企業誘致に始まり、五斗長垣内遺跡等の歴史文化遺産群のストーリー化、日本遺産の認定へとつなげています。

 地形、地域の課題への取組では、明石海峡大橋を通行できない小型バイクや自転車の輸送が可能な「まりん・あわじ」を新造船するとともに、早朝便対策を行うなど、海路の確保、充実を図っています。また、陸上交通においても、民間事業者の路線撤退に対処すべく、北部観光バスの運行を開始しています。

 更には、これまで、台風の度に溢水し、長年の課題であった津名地区志筑川の洪水対策も地元住民の方々の協力の下、志筑川放水路事業として完成しました。

 4期目(H29~R2)では、3期目までの取組をさらに昇華し、官民一体「チーム淡路市」として、更なる環境整備を推進してきました。

 現地解決型の地域基盤整備では、集合庁舎機能を有する「津名ふれあいセンター」、文化センター機能を有する「北淡事務所」を整備したことで、地域の核となる各地域事務所のバランス整備が整ったものと考えています。

 また、津名新図書館の整備により市域2館体制を改めて整えるとともに、市民と観光客の利便性を確保する生活観光バスの市域全域への路線拡大、全国で初めての民間施設直結型の淡路北スマートIC(インターチェンジ)開設など、市民生活に直結した安全安心な環境整備の充実に努めてまいりました。

 これら、合併以降の市の取組が実を結び、2019年全国自治体ブランドランキングでは、県内でも上位に位置し、全国約1800団体中64位と高く評価されたものと認識しているところであり、令和2年には、年間推計人口の社会増減も初めてプラスに転じました。

 一方、財政運営の面では、合併時の財政再建に始まり、将来に向けた持続可能な財政基盤の構築を果たすべき使命、最優先事項として取り組んでまいりました。

 合併当初の本市の財政状況は非常に厳しいものであり、その先行きは非常に不安定なものでした。これは、これまでの旧町の財政運営だけに課題があったというものでは決してありません。それぞれの地域が抱える課題に向き合う中、阪神・淡路大震災からの復旧復興、急速な少子高齢化、社会経済状況の著しい変化、加えて、国の地方分権化の推進など、予見し得ない様々な状況によるものでした。

 このような状況下におきまして、合併を機と捉え、本市の地域性に十分に配慮し、安易な行財政改革を行うことなく、十分に議論をし、市民の理解を得る中で本市に適した行財政改革を進めてまいりました。

 これら市民一体となった取組の効果により、財政破たんを危惧されていた本市は、合併以降、様々な積極的施策を実施しつつも、財政赤字を回避するとともに、多額の地方債を減少させ、基金の増額を図ってきました。その効果額は、合併当初、約1,060億円であった地方債残高は、約429億円減少し、基金残高では、約93億円の増加となっています。

 また、国が示す財政健全化の基準である財政健全化指標では、一時の危機的な状況から毎年度改善を図り、将来的にも一定の目途が立つ状況となっています。

 昨年から新型コロナウイルス感染症という世界規模の感染症パンデミックが猛威を振るう中、「社会生活システムを維持しながらコロナウイルスに勝つ」を合言葉に掲げ、感染症の感染防止対策から、市民生活への支援、地域経済活性化対策など、国県の対策交付金の動向に先んじて、時期を逸することなく様々な施策を実施してまいりました。

 国県の財源を有効に活用する中、市の独自財源を捻出し、総額約65億円の新型コロナ対策予算が措置できたのも、先に述べました将来を見据えた財政基盤の構築への取組、非常時への対策が実を結んだものと行財政改革の必要性を再認識しました。

 しかし、去る1月中旬に2度目の緊急事態宣言が発令されるなど、未だ新型コロナウイルス感染症の感染拡大が猛威を振い、全国規模での景気の低迷や地域経済の冷え込みなど、本市の財政運営も予断を許さない状況となっています。

 また、コロナ禍にあって安全で安心な住民生活が行えるよう社会的な環境の整備から、新たな暮らしのスタイルの確立、新たな付加価値を生み出す消費、投資の促進など、市の果たすべき役割はより大きく、スピード感を持った対応が求められるようになっています。

 このようなコロナ禍にあり、新たな区切りとなる5期目では、過渡期からの市政を担ってきた時の市長の責務として、「未来へつなぐ」をキーワードに淡路島のフロントリーダーとして、合併市の完成を目指します。

 112年前、洲本市に鐘紡の工場ができ、1市10町の素地ができました。今、112年振りに、大きな追い風が本市に吹こうとしています。その風を最大限に生かし、「未来へつなぐ輝く淡路市」を実現します。

 そのため、5期目の政策目標に次の5つを掲げ、これまでの取組の総点検から次のステージへの発展、「総集から次世代への飛躍へ」と進めてまいります。

 1つは、行財政改革と新たな行政展開

 2つは、コロナ対策から南海トラフへの備え、万全な危機管理体制の構築

 3つは、生活基盤の充実と新たな働き方改革

 4つは、福祉と教育の先進市を目指す取組

 5つは、田園観光都市へ美しい環境島ブランドの構築

であります。

 1つ目は、行財政改革と新たな行政展開では、本市にあった行財政改革の推進は当然ながら、コロナ禍で加速する新しい生活様式への環境の変化、人や企業の東京一極集中型から地方分散型への大きな流れを捉え、地域の魅力発信、移住や企業誘致の加速など、新たな行政展開を図ります。

 2つ目は、万全な危機管理体制の構築では、新型コロナウイルス感染症に万全の対策を進めつつ、南海トラフ地震について、ソフトとハードの両面から地域防災力の強化、充実を図ります。

 3つ目の、生活基盤の充実では、地域公共交通の更なる充実を目指し、生活観光バスの淡路医療センターへの南進、明石海峡大橋の島民の無料化など、地域住民の希望の実現に向け、粘り強く取り組むとともに、IoT化の推進、キャッシュレス決済の普及促進など、市民生活の利便性向上、質の向上を目指します。また、新たな働き方改革では、高齢化が進んでいる現状を労働人口の増加とポジティブに捉え、高齢者の就労促進支援や健康寿命の延伸、企業誘致の推進による雇用の創出に努めます。加えて、基幹産業である農業、漁業の担い手対策として、北淡路地域の遊休農地では、新たな再整備事業が展開されていますが、本市の地域性を生かし、人材確保や企業参入による多様な担い手の育成、最新技術を駆使したスマート農漁業の導入支援など、重労働である農漁業の負担軽減を図り、強い農水産業を目指します。

 4つ目、福祉と教育の先進市を目指す取組では、健康で安心して住み続けられるまちとして、地域支援事業の推進や高齢者福祉サービスの充実を図ります。また、子育て支援・教育では、出産から子育ての一貫した支援制度の充実、タブレット教育など、これまでの先導的な取組に更に磨きを掛け、選び続けられる淡路市へ、その取組を進めます。

 5つ目は、田園観光都市へ美しい環境島ブランドの構築では、コロナ禍で見通しが不透明ですが、統合型リゾート施設の誘致を含む大阪湾ベイエリアの活性化に向けた動向をしっかりと見定め、田園観光都市としての基盤整備を進め、更なる飛翔を遂げるための次の一手としてまいります。

 とりわけ、各種課題の整理では、市域の環境整備の最終段階として、新火葬場の整備とごみ焼却場の広域化が控えており、丁寧に協議を進め、将来に向けた生活基盤の整備を着実に進めてまいります。

 

(経済情勢、財政状況)

 次には、「経済情勢、財政状況」です。

 国においても予算編成の基本方針が示され、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい経済状況の中、内外の経済動向を注視しながら、躊躇(ちゅうちょ)なく必要な対策を講じるなど万全な対応を行うとされています。

 また、国財政は、引き続き、厳しい状況にある中で、「経済あっての財政」との考え方の下、経済財政運営に万全を期するとともに、「経済財政運営と改革の基本方針2020」、いわゆる「骨太の方針2020」に基づき、経済・財政一体改革を推進することとされています。

 また、国民の命と暮らしを守るため、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図り、ポストコロナの新しい社会づくりとして、デジタル社会や脱炭素・グリーン社会の実現、地方の活性化に向けた新たな人の流れの創出、少子化対策の推進など、全ての世代が安心できる社会保障制度の構築、働き方改革や地域共生社会の実現、自然災害からの復興や国土強靭化、安全保障の強化に取り組むとされています。

 予算編成では、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図りつつ、ポストコロナの新しい社会の実現を目指し、中長期的な成長力強化の取組を推進する中、歳出全般にわたる聖域なき徹底した見直しによる財政健全化への着実な取組を進めるとともに、メリハリの効いた予算編成を目指すとされています。そのため、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」に基づき、令和2年度第3次補正予算を、令和3年度当初予算と一体とする15か月予算として編成をされています。

 予算規模は、過去最高を更新し、税収の見通しも不透明な中、一般会計歳出の約3割を占める社会保障費は今後も増加が見込まれており、感染症の状況次第では、支援の継続、新たな追加支援など、非常に厳しい、難しい財政運営を迫られています。

 そのようなことから、地方においては、「骨太の方針2020」を踏まえ、一般財源の総額を確保しつつも、国の取組と基調を合わせ徹底した見直しを進めるとされています。

 本市におきましては、持続可能な財政基盤の構築に向けた様々な取組により、一定の財政運営の見通しを立てていたものの、収入の約4割を占める地方交付税における合併特例措置としての加算制度の終了に加え、新型コロナウイルス感染症の影響による税等の減収により、単なる歳出の削減、見直しではなく、財政構造そのものの見直しの必要性、緊急性が高くなっています。

 引き続き、国や社会経済の動向を注視しつつ、地域の実情に応じて適切、迅速な対応が図れるよう、財政健全化への取組を進めてまいります。

 

(重点項目)

 それでは、「重点項目」です。

 令和3年度は、コロナ禍の中、合併による地方交付税の特例措置が期限を迎えるなど、厳しい財政状況であり、令和の合併を見据え、市の総合計画にある目指すべき将来像「いつかきっと帰りたくなる街づくり」の更なる推進を図るため、「継続と準備」を市政運営の基本とします。

 「継続」では、これまで重点項目として掲げてきました「特色ある教育の充実」、「企業誘致の積極的な推進」、「総合的観光施策の充実」、「少子化対策」及び「市民の安全・安心対策」にさらに磨きを掛け、市の将来に希望が持てる取組へとつなげてまいります。

 また、「準備」では、市域の基盤整備の最終段階として、大型公共施設の適正な整備と長寿命化を進めるとともに、公共交通機関の確保と充実を図ることで、教育・観光などの付加価値が生きるグランドデザイン・ゾーニングにつなげてまいります。

 

(特色ある教育の充実)

 まず、一つ目は、「特色ある教育の充実」です。

 令和2年度から全面実施となった新たな学習指導要領では、子どもたちが未来社会を切り拓くための資質と能力を一層確実に育成することを目指し、これまで長年目指してきた「生きる力」の重要性が改めて捉えなおされています。

 日々刻々と変化する社会状況の中、情報化の急速な進展により、社会構造は大きく変化をし、大規模な自然災害に加え、新型コロナウイルス感染症の世界的規模での感染拡大の影響は、予測が困難な厳しい挑戦の時代を予想させるものとなっています。

 このような時代だからこそ、児童生徒の学びの変革実現を目指し、情報活用能力を、学習の基盤となる資質・能力と位置付け、ソフト・ハードの両面から充実を図ってきました。

 令和3年度では、9年間を見据えた教育の実践、教員の資質向上を目的とする「あいプロジェクト事業」を継続、発展させるとともに、タブレット教育の代名詞である「学びイノベーション事業」での最先端技術を取り入れた学びなど、これまでの取組の強みを生かした事業を発展的に展開してまいります。

 また、社会教育分野では、弥生時代の鉄器工房跡として国史跡の指定を受けた「五斗長垣内遺跡」、「舟木遺跡」など、歴史文化遺産の多様な活用を目指し、文化財総合拠点施設の整備について、検討を重ねてまいります。

 

(企業誘致の積極的な推進)

 次に、二つ目の「企業誘致の積極的な推進」です。

 情報化社会の進展は、これまでのライフスタイルに変革をもたらし、コロナ禍が、若年層の働き方や価値観に大きな影響を与え、東京一極集中の課題や企業の地方移転の可能性を浮き彫りにしています。

 また、2025年には、大阪・関西万博が予定されており、統合型リゾート施設の誘致など、今後、大阪湾ベイエリアの開発はさらに活発化することが見込まれています。本市においても、これらを見据えた新たな誘致活動の展開が求められます。

 このような状況をチャンスと捉え、これまで以上に、企業誘致の取組を強化してまいります。

 令和3年度では、引き続き、自然豊かな環境と阪神間に近い地理的優位性を生かし、地域の理解を得ながら、民間活力による遊休地や遊休施設の積極的な利活用を図ってまいります。

 西海岸(西浦)では、新たな民間施設が多数整備され、交流人口の著しい増加がみられており、閉校した学校施設の利活用の需要が高まっています。また、北淡路地域では、新たな再整備事業が展開されますし、東海岸(東浦)の夢舞台サスティナブル・パークは、誘致企業に加え、総合病院や福祉施設の集積が図られ、次世代のまちづくり、持続可能な地域デザインの先進地へと歩みを進めています。

 アフターコロナ又は災害時のリスク分散の観点から、本社機能の地方移転やサテライトオフィスの導入を検討する企業のニーズを把握し、積極的な誘致活動を展開するとともに、これまでの支援制度に加え、企業進出に向けた新たな支援制度の創設などの企業の在り方を見据えた誘致を推進してまいります。

 いずれにしましても、企業誘致の促進は、雇用の創出や定住人口の増加による地域活性化のために非常に重要であると認識しており、県企業庁などの関係機関と立地情報の収集ネットワークを形成をし、企業ニーズに即応した誘致活動を展開してまいります。

 

(総合的観光施策の充実)

 次に、三つ目の「総合的観光施策の充実」です。

 風光明媚な市として、日本遺産をはじめ数多くの風土資産に囲まれる環境、民間施設を含め多数の観光施設などの観光資源を有効に活用し、魅力ある誘客対策を行うことで、新たな田園観光都市を目指します。

 また、淡路島として、「淡路島総合観光戦略」の取組を進め、一体的、広域的な観光施策を展開をし、新型コロナウイルス感染拡大の状況を注視しながら、国内外の観光客誘致に努めてまいります。

 令和3年度は、同様にコロナ禍の状況を踏まえ、観光による交流人口の増加に向けた取組や地域活性化への取組として昨年開催が予定されていました「淡路花博20周年記念 花みどりフェア」の実施、淡路島観光協会との連携事業を積極的に推進することは当然ながら、市夏まつり大会等の継続事業を実施するほか、新たに市独自の観光メディア戦略を展開してまいります。

 また、淡路島の玄関口として、観光資源の連携を図るため、海上及び陸上交通の連結拠点となる岩屋ポートビルの整備を進めてまいります。

 観光は、地域の魅力をいかにブランド化するか、観光価値をどのように高めるかにかかっています。広域的な取組と市独自の施策を相互に連携させ、点を線で結び、そして面へと広がる取組を進めることで、交流人口の増加、誘客促進につなげてまいります。

 

(少子化対策)

 次に、四つ目の「少子化対策」ですが、

 国においては、少子化社会対策大綱が示され、新しい令和の時代にふさわしい少子化対策が求められています。個々人の結婚や出産、子育ての実現を阻む様々な要因による未婚化・晩婚化が少子化を進行させ、社会経済に多大な影響を与えています。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行は、安心して生み育てられる環境整備の重要性を改めて浮き彫りにしています。このことから、同大綱では、「希望出生率1.8」の実現に向け、令和の時代にふさわしい環境の整備、国民が結婚・出産、子育てに希望を見いだせるとともに、男女が互いの生き方を尊重しつつ、主体的な選択により、希望する時期に結婚でき、かつ、希望するタイミングで希望する数の子どもを持てる社会をつくることを基本目標としています。

 本市では、これまでも出会いから子育てにつなぐ一貫した支援の充実に努めてまいりました。しかし、子育て世帯の約63が3人以上の子どもを理想としている一方、年々子どもの数は減少傾向にあり、更なる支援の充実が求められているところです。

 令和3年度では、子どもが健やかに育つ養育環境と、地域のふれあいの中での子育て支援に関わる様々な取組を通じ、安心して子どもを産み育てることができるまちづくりの実現を目指します。

 

(安全・安心対策)

 最後に、五つ目の「市民の安全・安心対策」です。

 誰もが住んで良かった、住み続けたいと思える環境整備、安心・安全な生活基盤の整備は、基礎的自治体、現場を預かる自治体としての果たすべき役割の根幹と捉えています。道路や上下水道のインフラ整備から災害対策、公共交通機関の充実など、地域社会の変化に応じ、多様で迅速な対応が求められています。

 令和3年度では、安全・安心対策の要である地域の防災対策として、地域防災計画の見直しを行い、コロナ禍での感染症対策、避難所機能の充実を図るとともに、町内会等の自主的、継続的な防災活動に対する新たな支援制度を創設します。

 また、既存の生活観光交通の維持、充実を図るとともに、将来に向けた生活観光交通の在り方の検討、公共交通空白地域の解消に向け取り組んでまいります。

 長年の懸案である火葬場の集約化は、地域住民の御理解と御協力により、大きく進もうとしています。地域活性化等の施策と連携させ、安全で安心な生活環境の整備に努めてまいります。

 以上、重点項目の説明とさせていただきます。

 それでは、市政運営の基本となる最上位計画である「第2次淡路市総合計画」に沿い、市の将来像「いつかきっと帰りたくなる街づくり」の実現に向けた令和3年度の主要施策について、述べさせていただきます。

 

【第2次淡路市総合計画・前期基本計画】

[第1章 共に築く次世代につなぐまち(共生・協働・行政経営)]

 一人一人がお互いを尊重し、市民の誰もが自分らしく活動できる共生社会の実現と、市民の誰もが主体的に参画する協働によるまちづくりを進めます。市民自らが築く次世代につながるまちづくりの実現に向け、効率的で効果的な市政運営に取り組みます。

 主要施策では、人権意識の向上に向け、各種啓発事業を実施するとともに、人権教育を推進します。また、人権まちづくり基本計画の中間見直しを見据え、市民の人権意識の調査、分析を行います。男女共同参画では、市民協働センターを拠点とし、相談体制の強化、充実を図ってまいります。

 コロナ禍におきまして、交流の形態も変容しており、リモートを含めた交流の手法を模索するとともに、広報公聴機能の更なる強化充実や市勢要覧の更新など、情報共有と相互連携の質の向上に努めてまいります。

 持続可能な行政経営(運営)の施策では、住民サービスの質の向上に向け、先端技術(AI)や民間活力の導入を推進するとともに、研修を通じた職員の質の向上、事務事業の見直し等による効率的効果的な組織づくりに取り組みます。また、徴収率の向上による税収の確保は当然ながら、本来の趣旨に則したふるさと納税制度に対する積極的な取組により、本市を応援してくれるファンづくりはもとより、その思いに答える中、必要な財源の確保に努めてまいります。

 

[第2章 安全安心で快適に暮らせるまち(定住環境)]

 安全安心で快適な生活を営むための生活基盤の計画的な整備によるまちづくりを進めます。また、これまでの自然災害の教訓を踏まえ、防災体制の強化と市民の防災意識の高揚を図ります。

 主要施策では、自然と調和した住環境の整備に向け、住宅等の耐震化に対する支援のほか、空き家対策を推進するとともに、都市計画区域の再編に向けた啓発活動を実施します。公営住宅は、計画的な修繕、改修による適正管理、用途廃止による戸数の適正化に努めながら、空き部屋を都市圏からの短期移住体験施設として有効活用するなど、先導的な工夫を実践してまいります。

 また、定住促進への取組では、更なる企業誘致を推進するとともに、市内企業支援として、UIJターンに係る支援制度のほか、商工会と連携し、専門的な経営サポートから人材確保や資格取得に対する新たな支援など、多様な取組を実施をします。

 ふるさと納税を活用した定住環境の整備では、景観整備、防犯灯や防犯カメラの設置に対する支援などに加え、高校生の通学助成制度の創設など、財源の有効な活用を図る中、地域の実情やニーズに的確に対応してまいります。

 地域のインフラ整備では、ライフラインである上水道の安定供給、下水道の計画的な普及、基幹道路の計画的な整備、生活道路の適切な維持管理、橋梁や跨道橋の耐震化など、広範な市域における安全で快適な環境の実現に努めてまいります。

 公共交通機関の充実では、高速バス駐車場の適正管理、生活観光バスや地域コミュニティバスの維持はもとより、地域実情に応じた運行形態の検討を推進します。

 また、地域の防災対策では、河川の氾濫やため池の決壊を未然に防ぐための計画的な改修や防災設備の強化充実といったハード面での対策をはじめ、防災リーダーや自主防災組織の育成など、ソフト面での施策を充実させることで、地域防災力の強化を図ってまいります。

 安全安心な市民生活の実現、消費者保護の充実では、関係機関と更なる連携強化を図るとともに、出前講座や啓発活動を推進してまいります。

 

[第3章 支え合い健やかに暮らせるまち(保健・医療・福祉)]

 市民の誰もが、いつまでも心身共に健康で生きがいを持ち、住み慣れた地域で支え合いながら安心して暮らせるまちづくりを進めます。高齢者、障がいのある人や子どもとその家族を地域で支え合い、地域一体となって子育てを支援する環境の充実を図ります。

 主要施策としましては、健康づくりの推進では、不妊治療や妊婦検診に対する支援、母子保健事業の推進など、切れ目のない支援を行うとともに、高齢者が健康で安心して元気に暮らせるための地域包括ケアシステムの構築、地域社会で活動や活躍できる新たな仕組みづくりに積極的に取り組んでまいります。

 また、安心して子どもを産み育てられる環境づくりとして、産科医療体制の確保など、課題の解決に向け、様々な検討を行うなど、地域医療体制の確保、充実にこれまで以上に取り組むとともに、出会いから子育てにつなぐ一貫した支援や地域一体となった子育て環境の整備に努めてまいります。

 地域福祉の推進では、拠点施設となる福祉会館の整備や地域福祉計画の見直しを図る中、社会福祉協議会、民生委員・児童委員等と連携を強め、地域の福祉活動を支える体制づくりを進めるとともに、障がい福祉サービスや相談支援体制の充実など、障がい者の自立した生活と社会参加の促進を図ります。

 

[第4章 ふるさと淡路を学び創り育てるまち(教育)]

 子どもたちが心豊かで確かな学力と生きる力を身に付け、ふるさとを学び育てるまちづくりを進めます。また、子どもから大人まで多様な学びの場を創出することで、生涯にわたり生きがいを持てる機会の充実を図ります。

 主要施策としましては、学校教育では、「生きる力」の重要性を再認識する中、タブレット活用教育や小中一貫教育を推進するほか、学校と家庭や地域が一体となり、一緒に協働しながら子どもたちを育む仕組み、子どもたちの学びを支える仕組みづくりとして、コミュニティ・スクールの導入に向け歩みを進めてまいります。また、教育環境の整備として、学童保育施設や学校施設の計画的な改修に加え、小学校教育用コンピューターの更新、スクールバスの増便等のコロナ禍の感染拡大防止対策など、新たな教育環境の整備を着実に実施してまいります。

 生涯学習では、ライフスタイルの多様化や高齢化の進行に伴い、地域の活動拠点となる公民館活動を支援するとともに、市民の多様な学びの場、情報拠点となる図書館の環境整備に努めてまいります。

 スポーツ振興では、気軽にスポーツに親しみ、主体的・自主的に取り組むことができるスポーツの機会の充実や活動支援などの環境整備を促進をし、日常生活におけるスポーツの定着化を図ります。また、関係団体と連携をし、スポーツを通じた地域の活性化、「スポーツ親善大使」による市の魅力発信に取り組みます。

 

[第5章 地域資源と地域活力があふれるまち(産業)]

 豊かな自然環境を守り育てる循環型社会や再生エネルギーの取組により、環境先進地として、持続可能な社会づくりの実現に取り組みます。また、歴史文化や地域特産物などの地域資源を磨き上げ、更なる活用を図ることで、地域や産業の活性化と連携が図られる地域経済循環型のまちづくりを進めます。

 主要施策として、環境先進地への取組では、CO₂の削減、公衆衛生意識の向上、環境美化の推進を図るため、再生エネルギーの活用に加え、ごみ活推進プロジェクトによりごみの減量化、再資源化を強力に推進します。環境学習の一環として、小学校に資源ごみ回収拠点を設け、環境意識の向上に努めます。

 地域産業の活性化では、地域の基幹産業である農漁業の稼ぐ力、所得の向上を図るため、担い手の育成から経営基盤の強化、6次産業化の推進や販路開拓など、様々な取組を支援します。また、農作物被害の軽減に向け、地域ぐるみで有害鳥獣の駆除対策に取り組みます。

 商工振興では、人材育成や販路開拓、経営相談などの中小企業の経営基盤の強化に対する支援の充実を図るとともに、魅力ある環境やライフスタイルの変化に伴い需要が伸びている新規の起業に対する支援、ふれあい商品券による市内の消費喚起対策など、地域のニーズに応じた多様な取組により、雇用の創出や地域経済の活性化を図ります。

 観光振興では、新たな田園観光都市の環境整備に向け、市内観光拠点施設の整備、充実を図り、淡路島観光協会や隣接市との広域連携により観光資源の有効活用を図ります。また、日本遺産をはじめ、食や体験など、市の地域的特性、魅力を生かした施策を展開することで、誘客を図るとともに、新たな観光ニーズの発掘や異業種間での連携など、相乗効果の期待できる取組へとつなげてまいります。

 

(むすび)

 むすびとして、平成から令和へと時代が移り変わり、社会が大きな変革の時を迎える中、新型コロナウイルスの脅威が、人々の暮らしや地域経済に大きな影を落としています。

 阪神・淡路大震災という未曾有の大災害からの創造的復興に代表されるように、私たちはこれまでも、淡路島地震、鳥インフルエンザ対策など、様々な困難を乗り越え、今の淡路市があります。

 私、門康彦には、夢があります。「いつかきっと帰りたくなる街づくり」、東京で働く青年から届いた言葉。地域資源を生かした新たな田園観光都市としての環境整備、令和の合併を見据えた持続可能な行政基盤の構築、そして、市民誰もが夢のある安全安心で快適なまちづくり、「未来へつなぐ輝く淡路市」の実現は、私の責務でもあります。

 私の座右の銘の一つ、「心は少年」。いつまでも素直に、そして、新たな挑戦を続ける。これは、まちづくりにもつながります。新たな風が吹く今、困難を乗り越え、あらゆる機会をチャンスと捉え、躍動感と魅力を感じるまちづくりに向け、市民の皆様と共に、新たなステージへ挑戦してまいります。

 そして、その胸には、チーム淡路市、矜持の言葉として、ドイツのロバート・ボッシュ氏の言葉を刻んでおきたいと思います。

 財産を失っても、何もなくならない。

 勇気を失ったら、多くがなくなる。

 そして、誇りがなくなったら、全てがなくなる。

 最後に、議員の皆様におかれましては、今後も円滑な市政運営ができますよう、なお、一層の御指導と御支援を改めてお願い申し上げますとともに、市民の皆様の御理解と御協力を重ねてお願い申し上げまして、令和3年度の施政方針とさせていただきます。