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令和8年度 淡路市長施政方針
(はじめに)
昨年の市長選挙におきまして、市民の皆様から力強い御支援を賜り、淡路市長という重責を担わせていただくことになって、本日で295日目となりました。多くの市民の皆様からいただく御期待と、現場行政の長としての重い責任。生まれ育ったふるさとのために仕事ができる喜びと、市民の皆様と共に淡路市の未来を創っていく手ごたえ。毎日が学びと反省と、そして、新たな発見の連続の日々でした。
瀬戸内海に浮かぶ淡路島は、いざなぎ・いざなみの「国生み神話」の舞台とされる歴史があり、古くから自然の恵みで都(みやこ)の食を彩った「御食(みけつ)国(くに)」として知られています。温暖な気候と美しい海岸線、のどかな田園風景は私たちの誇りであり、多くの人を引きつけてやまない魅力があります。その淡路島の北部に位置する淡路市は、明石海峡大橋によって神戸市と隣接しており、大阪湾ベイエリアの一翼として、また、大都市の隣にある「となリゾート」として、今、大きな注目を集めています。
その一方で、本市においても、他の多くの地方都市と同様に、少子高齢化、人口減少という大きな課題を抱えており、いわば「静かなる有事」というべき深刻な状況に直面しているのも事実です。このまま有効な対策を講じなければ、本市の人口は今後も減り続け、市民生活のあらゆる側面に深刻な影響を及ぼすことが懸念されています。これは、私たちの子どもや孫の世代、さらにその先の未来の淡路市を左右する、極めて重大な問題であると認識しています。
このような厳しい現状を踏まえ、市民の皆様と共に、夢と希望ある淡路市の未来を切り開くため、私は、今般の予算編成を「次の世代に選ばれるための、未来への先行投資」と位置付け、次の6つの柱を重点政策として掲げ、「全ての市民の可能性を高め、全ての市民が輝く淡路市」の実現に向け、全力で取り組んでまいります。
(少子化対策・未来を担う人づくり)
一つ目は、「少子化対策・未来を担う人づくり」です。
少子化の流れに歯止めを掛け、子どもたちの笑顔があふれる淡路市を実現するため、安心して子どもを産み育てられる環境づくりを最優先と位置付け、多角的な支援策を講じていきます。
保育環境の改善を図るため、津名地域の塩田、中田、大町保育園の統合を視野に入れ、新設こども園の整備に向けて、具体的な調査を進めていきます。子育てしやすいまちづくりの一環としては、子育て学習センターを活用し、就学前児童の「遊びの広場」の整備を進めます。
また、令和8年4月から、国の制度により、学校給食費の抜本的な負担軽減が小学校で実施されます。本市においては、この制度に加え、重点支援地方交付金を活用し、小中学校の給食費の無償化と、保育所・認定こども園の副食費の無償化を実施します。
小中学校の教育環境を向上させる取組を継続していくことも重要です。「ミライコネクトプロジェクト事業」として、小学1年生から中学3年生まで、タブレット端末を活用した授業を進めるほか、児童・生徒が魅力ある学びに出会えるよう、「であいプロジェクト事業」により、教員が魅力ある授業を追求できる研修体制を構築します。
小中学校の不登校の児童・生徒は、低年齢化が進んでいます。既に、中学校では、全ての学校に不登校の生徒をサポートする支援員を配置していますが、小学校でも、全校に支援員を配置できるよう拡充し、より子どもたちに寄り添った支援を行っていきます。
さらに、高校生の教育環境の充実と保護者の負担軽減を図るため、市のコミュニティバスの通学定期代の無償化を継続するほか、市外の高校に通う高校生の通学費助成については、補助率を3分の1から2分の1に拡充することにします。
(人口減少対策・選ばれるまちづくり)
二つ目は、「人口減少対策・選ばれるまちづくり」です。
人口減少問題への取組は、マーケティングの視点を持ち、ニーズを的確に把握し、ターゲットを明確にして、効果的なアプローチを戦略的に行っていく必要があります。本市が若い世代の方々に選ばれるまちになるよう、シティプロモーションの推進方針を新たに策定し、地域の魅力を効果的に発信することで、定住人口の増加や企業誘致につなげていきます。
特に、若い世代の移住・定住を促進するため、島外から市内に転入し、住宅を取得する若者夫婦・子育て世帯に対する支援として、最大195万円を補助する制度を新たに設けます。また、本市へ移住を希望される方への情報提供や相談、新婚世帯の経済的な負担を軽減する施策を継続するほか、町内会などを対象とした、まちの魅力度アップ支援事業により、住民が主体となった地域の賑わいづくりを支援していきます。
全ての市民の皆様が活躍できるまちをつくるためには、特に、女性が企業や地域でその才能を発揮できるよう、サポートしていく必要があると考えています。女性が働きやすい職場づくりに向けて、企業が実施する社内研修や計画策定などの費用の一部を助成する制度を、新たに設けることにします。
(高齢化対策・健康長寿でいきいきと暮らせるまちづくり)
三つ目は、「高齢化対策・健康長寿でいきいきと暮らせるまちづくり」です。
高齢化が進む中、高齢者の皆様が住み慣れた地域で、安心して、健康で、生きがいをもって暮らせる社会をつくることは、本市の活力を維持していくためにも、不可欠なことであると考えています。
高齢者の方などの移動手段の確保と、利便性の向上を図るため、福祉タクシー等利用助成事業の対象となる方の要件を拡充します。また、認知機能の低下を予防するための取組として、聴力が低下した高齢者の方に対し、補聴器の購入費用の一部を助成する制度を継続するなど、高齢者の皆様が豊かな知識や経験を生かし、地域活動などの社会参加につながる取組を進めていきます。
健康づくりの面では、生活習慣病やがんの早期発見を図り、健康寿命を延伸するため、まちぐるみ健診の検査項目を拡充するほか、がん患者の方々の心理的な負担を軽減するため、アピアランスサポート事業の所得制限を廃止するなど、全ての市民の皆様が健康で、生きがいを持ち、長生きできるまちづくりを進めていきます。
(行財政改革・持続可能な市政運営の確立)
四つ目は、「行財政改革・持続可能な市政運営の確立」です。
限られた財源の中で、複雑、多様化するニーズに対応し、将来にわたって質の高い行政サービスを提供し続けるためには、スピード感をもって、行財政改革を続けていくことが必要であると考えています。
まず、デジタル・トランスフォーメーションの推進計画を策定し、庁内においてDXを進めていきます。職員の意識向上と職場環境の改善を図るため、研修を強化し、行政の事務の効率化と、市民サービスの向上につなげていきます。市内の保育所・認定こども園においては、保育ICTシステムを導入し、保護者の利便性の向上と、保育士の負担の軽減を図っていきます。
また、本市が抱える課題を、市民の皆様に「自分ごと」として捉えていただき、市民の皆様と解決策を模索することで、市民参画の深化を図ることを目的として、「自分ごと化会議」を開催します。行政からの一方的なサービスの提供ではなく、市民の皆様と共に知恵を出し合い、創り上げていくことが、「共創」によるまちづくりにつながるものと考えています。全ての市民の皆様が活躍できるまちをめざし、市民交流・人権課を新たに設け、市民の参画と交流を進めていきます。
社会が大きく変化していく中で、あらゆる課題を解決していくためには、行政の力だけでは限界があります。全ての市民の皆様が主役となり、地域の団体や企業などが一体となって考えて汗を流す、「オール淡路市」での取組が不可欠であると考えています。
(経済振興・新たな魅力と活力の創出)
五つ目は、「経済振興・新たな魅力と活力の創出」です。
地域経済の活性化は、市民生活の安定と向上、そして、市の持続的発展の基盤となるものです。本市の強みである農漁業、観光、そして、新たな産業の育成に力を注ぎ、雇用の創出と、所得の向上をめざしていきます。
商工会との連携で運用しているデジタルマップ「あデジ」を活用し、淡路島食材「こだわり宣言店」の店舗情報を登録して、地産地消認証店の情報を新たに発信します。地域の豊かな農水産物を活用することで、誘客につながる取組を進めていきます。
観光振興の面では、国の交付金を積極的に活用し、国内での観光プロモーション事業に加え、インバウンドの誘致につながる取組を強化し、地域経済の活性化につなげていきます。
また、国の重点支援地方交付金を活用して、プレミアム率を25パーセントとしたプレミアム商品券事業を実施します。物価高騰の影響を受ける生活者の支援を通じて、市内の事業者の支援へとつながり、相乗的な効果を生み出すものと考えています。
(安全安心対策の強化・強靭(じん)なまちづくり)
六つ目は、「安全安心対策の強化・強靭(じん)なまちづくり」です。
阪神・淡路大震災の震源地である本市には、震災の経験と教訓を次世代につなぐ責務があります。近年の気候変動による自然災害の激甚化、さらに、「南海トラフ巨大地震」といった大規模災害への備えとして、市民の皆様の安全安心を守るため、ハードとソフトの両面から、万全の対策を行っていきます。
本市では、学校や公民館などの指定避難所に加え、身近な場所での避難を想定し、町内会が所有する集会所等を届出避難所として登録する取組を進めており、避難所としての改修に必要な費用を補助する制度を継続します。
また、災害が発生した際に、家屋被害の認定調査や、罹災証明書の発行業務などの効率化を図るため、被災者支援システムを新たに導入します。交通安全対策としては、通学路などの生活道路において、通行者の安全を確保するため、車両の減速を図る対策を実施します。
以上の重点6項目を柱として、「全ての市民の可能性を高め、全ての市民が輝く淡路市」の実現に向け、市民の皆様との対話を通じた共創の理念のもと「地域の持続可能性」と「行政の持続可能性」を高める取組を進めていきます。
(第2次淡路市総合計画・後期基本計画)
次に、「第2次淡路市総合計画」の「後期基本計画」に基づき、本市が進める主要施策について、御説明申し上げます。
まず、「共に築く次世代につなぐまち( 共生・協働・行政経営)」では多様性を認め合い、「誰一人取り残さない」共生社会の実現をめざします。「第3次男女共同参画プラン」に基づき、誰もが自分らしく活動できる社会を築くとともに、地域住民や団体が主体的に取り組む「協働のまちづくり」を推進します。
行政経営においては、「行政改革大綱」及び「新行財政改革推進方策」に基づき、限られた資源を最大限に活用し、「公共施設等総合管理計画」に沿って既存施設の在り方を整理し、身の丈に合った行財政改革を推進するとともに、ふるさと納税による財源確保にも引き続き積極的に取り組んでまいります。
次に「安全安心で快適に暮らせるまち(定住環境)」では、生活基盤の計画的な整備を進め、防災体制の強化と市民の防災意識の高揚を図ります。定住拠点の整備では、起業しやすい環境づくりや本市の資源を活用した雇用創出に注力します。
道路交通網については、既存道路の長寿命化に加え、通学路の安全確保や自転車の利用環境向上など、市道の改良を計画的に実施します。
また、「あわ神・あわ姫バス」の運行等により公共交通機関の充実を図るほか、災害時を想定した海上交通確保の観点から明石海峡航路の維持に取り組みます。
更には、広域水道企業団と連携した水道水の安定供給、効率的な下水道整備による生活環境の保全、さらには地域におけるデジタル化を推進し、SNSや動画を活用した情報発信の強化により、行政サービスの効率化と安全安心の確保を適切に組み合わせてまいります。
次に「支え合い健やかに暮らせるまち(保健・医療・福祉)」では、市民の誰もが、心身ともに健康で生きがいを持ち、住み慣れた地域で支え合いながら、安心して暮らせるまちづくりを進めます。
健康診査等の受診による早期発見や生活習慣の改善、重症化予防への支援に注力し、関係機関と連携して「こころの健康づくり」や母子保健の充実を図るとともに、「第4期地域福祉計画」に基づき、社会福祉協議会や民生委員・児童委員等との連携を強め、地域で助け合い支え合うまちづくりを推進します。
高齢者福祉では「地域包括ケアシステム」を、障がい者福祉では社会的障壁を取り除くための「合理的な配慮」の提供をそれぞれ深めます。また、出会いから子育てにつなぐ一貫した支援の充実を図るため、「こどもサポートセンターおむすび」を核とした一体的・包括的な支援体制を確立してまいります。
次に、「ふるさと淡路を学びつくり育てるまち(教育)」では、子どもたちが心豊かで、確かな学力と生きる力を身に着け、ふるさとを学び、創り育てるまちづくりを進め、「学びたい、学び続けたい、そして共にやってみたい淡路市の教育の実現」に向けて取り組み、子どもたちの豊かな人間性を育み、個性を生かし創造性を伸ばす学校教育の充実を図ります。
また、子どもから大人まで多様な学びの場を創出することで生涯にわたり生きがいを持てる機会の充実を図るため、公民館を拠点とした地域のつながりや市民協働による図書館運営を通じて、郷土愛を育む生涯学習の場を広げるとともに、スポーツ協会やスポーツクラブ21等の活動支援を通じて地域コミュニティの活性化を図ります。そして、人権課題に向き合う学習機会の提供に努めるとともに、社会情勢の変化により生じる新たな人権課題への対応にも取り組みます。
教育委員会では、令和8年度は「第2期教育振興基本計画」「後期計画」の最終年となることから、次なる教育の羅針盤となる次期計画の策定に取り組むこととなります。
次に、「地域資源と地域活力があふれるまち(産業)」では、2050年「ゼロカーボンシティ」の実現に向け、自立型エネルギーシステムの構築や、草木ごみの資源化など、循環型社会の構築をめざします。
農漁業ではスマート農業の導入、新規就農支援、鳥獣被害対策や漁業経営の基盤強化を推進し、商工業ではビジネスサポートセンターによる経営相談や移住者の起業支援を強化します。また、伝統芸能の継承と「世界的観光立島・淡路市」の実現に向け、総合的な観光施策を展開し、歴史文化や特産物などの資源を磨き上げ、地域経済好循環型のまちづくりを進めます。
以上、総合計画の「後期基本計画」に沿って、主要施策を説明してきましたが、市政運営の基本であり、市の最上位計画である「第2次淡路市総合計画」は、令和8年度がその最終年度となります。「第3次淡路市総合計画」の策定に向けた取組は既にスタートしており、これまでワークショップやアンケートなどを実施してきました。市民の皆様からいただいた多様な意見を反映させるとともに、本市を取り巻く社会環境の変化を的確に捉え、あらゆる課題の解決に向けた計画を策定していきます。
(むすび)
市長として市政のかじ取りを担うということは、市民の皆様の命を預かるということだと考えています。20年の長きにわたり、淡路市のかじ取りを担ってこられた、門康彦(かどやすひこ)前市長の卓越したリーダーシップに対して、心からの敬意を表すとともに、引き継ぐべきものはしっかりと堅持して承継し、時代の流れとともに取り入れるべきもの、変えるべきものは大胆に改革するという、「不易流行」を旨として、市政を進めてまいりたいと考えています。
「まちづくりはひとづくり」と言われるように、地域の持続可能性を高めることを考える上で、忘れてはならないことは、人がいてこその地域であるということです。淡路市で暮らすことの価値を高め、「選ばれるまち」として「住みたい、住み続けたい、そして訪れたい淡路市」の実現に向け、今後とも全身全霊で市政運営に取り組んでいくことを、ここに改めてお誓い申し上げます。
最後になりましたが、議員の皆様におかれましては、二元代表制の下、議会と執行機関が両輪となり、円滑な市政運営ができますよう、なお一層の御指導と御支援をお願い申し上げ、また、市民の皆様の格別の御理解と御協力を重ねてお願い申し上げまして、令和8年度の施政方針とさせていただきます。
